【代表ブログ】これからの「快適な家」はどう決まる?HEAT20の基準づくりと「住み方」のお話
皆様、こんにちは。高橋建築株式会社の代表、高橋慎吾です。
普段は一級建築士として、またPHI公認パッシブハウスデザイナー、PHIUS公認パッシブハウスコンサルタントという立場で、日々の家づくりに取り組んでいます。
実は現在、私は「HEAT20」という団体の、住宅の性能水準の仕組みづくりを行うワーキンググループ(WG)に参加しています。HEAT20が提案してきた「G2」や「G3」といった断熱基準は、国の省エネ基準のもとになるなど、これからの日本の家づくりにおいて非常に大きな影響力を持っています。
そんな重要な「性能水準づくり」ですが、実は基準を決めるというのはものすごく難しい作業なのです。先日、会議のあと私が「性能水準WG メモ 髙橋 2026_09_25」という資料に考えていることをまとめました。今回はその内容をもとに、なぜ家の性能を決めるのが難しいのか、少し裏話をお話ししたいと思います。
計算通りにいかないのが「人間の暮らし」
住宅の性能を考えるとき、「外の暑さや寒さをどれだけ防げるか」という建物の外側(外皮)と外部との熱の収支は、簡単ではありませんが理論的に細かく計算で出すことができます。
しかし、どれだけ微細なところまで完璧に計算しても、それを一瞬で「リセット」してしまうものがあります。 それはズバリ、「住み方」です。
窓開け、エアコン、そして「何をしているか」
例えば「窓を開ける」という行為は非常に曖昧で、計算式に当てはめるのが困難です。また、家の中での熱の収支は、住む人の生活パターンによって全く違います。
- 家族の様子: 家族が何人いるか、ペットはいるかといった家族構成によって発生する熱は変わります。
- 何をしているか: 部屋の中でテレビを見ているのか、本を読んでいるのか、家事をしているのか、あるいは友人が遊びに来ているのかによっても室内の環境は変化します。
- エアコンのタイミング: 人間は決まった温度で機械的にスイッチをON/OFFするわけではありません。「まだ我慢できる」という感覚の違いや、出かける前だからつけないなど、時間帯や季節によっても使い方が大きく変わります。
このように、人の生活パターンや個人差によって、家の中の状況は全く違ってきます。どんなに精密なシミュレーションをしても、実際の「住み方」によって計算が無意味になってしまうほどの違いが生じるのです。
100年先を見据えた「基本」と「プラスアルファ」
では、これからの家づくりはどうあるべきでしょうか。私は、シミュレーションが目指すべきレベルとして大きく2つの段階があると考えています。
まずは「基本」のレベルです。外部からの熱の影響を最小限にし、部屋間の熱移動をできるだけ多くして家全体の温度差をなくすことです。 そして大切なのが、その先にある「プラスアルファ」のレベルです。ただ数値上の性能を追い求めるだけでなく、「快適と感じられる場所の創出」や、「住み方での快適さ・省エネの提案」を含んだレベルを目指す必要があります。
将来の温暖化などの気候予測や、アメダスだけでは測れないその土地特有の局所的な気候(ロケーション)まで考慮し、100年先を見据えた基準づくりが求められています。

最後に
私たち専門家がどれほど高性能な家を設計しても、最終的に家を完成させるのは「お客様自身の暮らし方」です。だからこそ、数字だけにとらわれず、お客様のリアルな生活に寄り添った「住み方の提案」ができる設計者でありたいと、日々の議論を通じて改めて感じています。
少し専門的なお話になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!家づくりについて気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。
高橋建築株式会社
代表取締役 高橋 慎吾
(一級建築士 / PHI公認パッシブハウスデザイナー / PHIUS公認パッシブハウスコンサルタント)







