こんにちは!高橋建築株式会社 代表の高橋 慎吾です。
住宅の性能計算をするとき、私たちは「PHPP(パッシブハウス・プランニング・パッケージ)」という専門の計算ソフトを使います。
今回、当社で設計した新築パッシブハウスの間取りや窓の位置などをそのままベースにして、「一般的な住宅(K社)の最新仕様で建てた場合」のデータと入力比較シミュレーションを行ってみました!
同じ間取り、同じ窓の配置でも、「建物の性能(断熱・気密・パッシブ設計)」の違いでどれほど快適性や光熱費が変わるのか、驚きの結果が出ましたので分かりやすく解説していきます。
今回比較したモデルハウスの概要
比較のベースにしたのは、今月完成見学会を開催させていただいた小鹿野町のI様邸です。

建物スペックと環境
- 間取り・ロケーション:南からわずか13度しか振っていない、ほぼ真南を向いた日当たりの良い好立地。綿密なパッシブデザインを施しています。
- 有効床面積:86.7㎡
- ※パッシブハウスの床面積計算は実に厳しく、階段や壁の厚みを除いた「実際に住める有効スペース」のみで計算します。
- 比較対象:K住宅(最新仕様)。※シミュレーション上、少し甘め(有利)に入力して比較しています。
衝撃のシミュレーション結果!
計算結果をグラフにまとめました。

項目ごとに詳しく見ていきましょう。
1. 年間の暖房エネルギー比較(家中を20℃に維持)
まずは、冬場にお家の中全体を「20℃」で快適に保つために必要なエネルギーの比較です。
- K住宅(最新仕様):143.5 kWh/㎡
- パッシブハウス:13.5 kWh/㎡
なんと、その差は10.6倍!
一般的な商品比較だと「1.1倍良い」「1.5倍違う」といったレベルが多いですよね。2倍違えば大ニュースです。それが10.6倍という結果になり、計算した私自身も驚いて何度も入力を確認してしまいました。
(ちなみに、私が住んでいる26年前の自社施工の自宅が、今のK住宅より少し良いくらいの性能なのですが、実際の我が家の光熱費と比べても非常にリアルで納得のいく数値でした。)
💡 年間の暖房電気代に換算すると…?
エアコン暖房(COP 4.0 / 電力一次エネ換算 2.7 / 電気代 35円/kWh)として計算してみます。
- K住宅:約 293,929円 / 年
- パッシブハウス:約 27,713円 / 年
- 年間の差:約26万6,000円
- 10年間の差:266万円
- 50年間の差:1,330万円
「そんなに暖房使わないよ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この計算は「廊下もトイレも家中どこでも20℃で快適に過ごす」という前提です。パッシブハウスなら、日射取得などをうまく使えば実質暖房がいらない(0円)日も多くあります。
2. 年間の冷房エネルギー比較(室内25℃・湿度60%を維持)
続いて夏場、室内を「25℃・湿度60%程度」に保つエネルギーの比較です。
- K住宅(最新仕様):30.2 kWh/㎡
- パッシブハウス:16.3 kWh/㎡
- その差:1.9倍(約2倍)
冷房は暖房に比べて元々性能差が出にくい領域です。「エアコンを付けっぱなしにするから夏の方が電気代がかかる」と思われがちですが、実は建物全体のエネルギー消費としては暖房ほど大きくありません。それでもパッシブハウスは約2倍の省エネ性能を発揮しました。
💡 年間の冷房電気代に換算すると…?
- K住宅:約 61,879円 / 年
- パッシブハウス:約 33,408円 / 年
- 年間の差:約2万8,000円
- 10年間の差:28万円
- 50年間の差:140万円
3. エアコンの買い替えコスト(ピーク負荷と設備台数)
見落とされがちなのが「一番寒い日に必要なエアコンのパワー(ピーク負荷)」です。
極寒の時期はエアコンの効率(COP)が2.8程度まで下がります。この厳しい条件で計算すると、必要なエアコンの台数は以下のようになります。
- パッシブハウス:6畳用エアコン1台で十分!
- ※当社では故障時のバックアップを考慮し、実際には2台設置をおすすめしています。
- K住宅:3台必要(3LDKの一般的な間取りなら実際は4台設置になるケースが多いです)。
10年ごとの買い替え、50年間(5回買い替え)で計算してみましょう(高性能エアコン1台20万円として計算)。
- K住宅:20万円 × 4台 × 5回 = 400万円
- パッシブハウス:20万円 × 2台 × 5回 = 200万円
エアコンの設備・更新費用だけで200万円の差が生まれます。
50年間のトータルコスト比較まとめ
光熱費とエアコン買い替え費用を含めた50年間のコスト比較です。
| 項目 | K住宅(最新仕様) | パッシブハウス |
| 50年間の暖房費 | 約 1,469 万円 | 約 138 万円 |
| 50年間の冷房費 | 約 310 万円 | 約 168 万円 |
| エアコン更新費用 | 400 万円 | 200 万円 |
| 合計 | 2,179 万円 | 506 万円 |
50年間の差額:1,673万円
建築時の初期費用(イニシャルコスト)が少し安かったとしても、住んでからの維持費(ランニングコスト)でこれだけの大きな差がついてしまいます。
お金には換算できない「プライスレス」な価値
今回のシミュレーションでは数字(金額)でお伝えしましたが、パッシブハウスの本当の価値は「住み心地」にあります。
- 家の中で厚着をする必要がない
- 足元が冷えないので、スリッパを履く必要がない
- 冬場の分厚い羽毛布団や毛布をしまう収納スペースがいらない
- 家中の温度差がなく、ヒートショックのリスクがない
実際にパッシブハウスにお住まいのお客様からは、皆様口を揃えてこう言っていただけます。
「なんでみんな、パッシブハウスに住まないの?」
家づくりをご検討中の方は、見た目のデザインや初期費用だけでなく、ぜひ「住んでからの快適性とトータルコスト」にも目を向けてみてくださいね。
そして一生の住心地を犠牲にしないでくださいね。
高橋建築株式会社
代表取締役 高橋 慎吾
(一級建築士 / PHI公認パッシブハウスデザイナー / PHIUS公認パッシブハウスコンサルタント)




































