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髙橋建築

断熱・気密

今回は天井、屋根、壁、床などの部位別の考察をしてみます。
断熱性能も各部位が弱点無くできていることが大切です。

それでは見ていきましょう。

各部位の仕様

3地域断熱と書いてあります。5地域なのに3地域仕様ですと言っていますね。

屋根

一部屋根断熱です。

内側から
石膏ボード9.5mm
ネオマフォーム60mm(λ=0.020)木材60mm 木部率9%
ネオマフォーム60mm木材60mm 木部率13%

U=0.189W/㎡K

石膏ボード9.5は12.5の間違いでしょうか?省令準耐火でしょうから。
ネオマフォームの60mmをダブルにしているだけあってとても良いですね。

天井

メインは天井断熱です。

石膏ボード9.5mm
グラスウール220mm(λ=0.038)木材 木部率13%

U=0.17W/㎡K

ここも12.5mmの間違いでしょうか?安全側ですから良いですけど。
すべての梁が220mmあるわけでは無く105mmのつなぎ貼りもむ受けられましたのでグラスウールを1段1段分けて計算すればU=0.16位にはなりそうです。

外壁

石膏ボード12.5
グラスウール(λ=0.038)100mm 木材 木部率17%
密閉空気層 5mm 木部 木部率0%?

U=0.43W/㎡K

まずは以前触れた木部率 私が構造図から拾うと柱間柱だけでも33%ありそうでした。これは大分違いそうです。
さらに密閉空気層部分に木部率が計算してない?わずかだけど有利側ですね。数字に表れてきませんが。
私が計算すると

U=0.52W/㎡Kでした。 間違っていたらごめんなさい。実際は2割も悪くなってしまいます。木材の面積比率は省エネ基準に載っている値なので在来軸組構法はこれで計算できますが,ビックフレーム構法までこの比率が使えるとは思ってもみませんでした。

この家ではありませんが真壁のデーターもあったので載せておきます。真壁ですと U=0.53W/㎡K だそうです。グラスウール24K75mmです。

床(一般部)

木質系フロア 厚みなし 
下地合板 24mm
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)100mm 木材 木部率15%

U=0.33W/㎡K

床は断熱が評価できないものもありますから0にして安全側にしていますね。
フローリングを計算に入れてもさほど大差は無いですから計算が楽であったり仕様変更があっても数字が変わらないようにそうしているのでしょうね。

床(畳)

畳45mm(λ=0.08)
下地合板24mm
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)100mm 木材 木部率15%

U=0.27W/㎡K

畳の床があるのに計算書では使われていないで一般部の床で計算してありました。これは安全側なので良いとしましょう。

床(外気に接する)

ポーチの上の2階の床ですね。

木質フロアー 厚みなし
硬質石膏ボード12.5mm
床下地合板 24mm
グラスウール32k(λ=0.036)180mm 木材 木部率15%
U=0.23W/㎡K

実際に計算すると2階の床の場合は天井断熱の場合の木部率と違ってもっとありますね。まあルールがありますからこれでいいのですけど。我々は正確に出します。

床(床暖部)

ここがよく分からないところです。図面には仕様が書いてあるのですが外皮の計算書では計算に入れてない気がします。

仕様書から読み解くとこのような感じです。

フローリング 12mm
床暖パネル EPS12mm (想像)根だなし(あったらもっと悪くなる)
グラスウール(λ=0.036)60mm 木部率23.2%(構造図より)

U=0.47W/㎡K

床暖パネル部は有利になる用に計算しました。
しかしなぜか断熱材が薄いのでこのようになります。
これが計算から漏れている気がするのです。

しかし、入れたとしても熱貫流が3W位の差ですからまあ大差ありません。

基礎(内部)

押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm
コンクリート140mm

U=1.05W/㎡K

基礎(外周)土間床

立ち上がり部
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm
コンクリート140mm
水平部
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm 幅900mm

0.64W/mK

玄関ドア下は立ち上がり部の断熱は全くしていないようです。

1.75W/mK

どこが弱点か見てみましょう

床で断熱できていない玄関や浴室の外周回りの基礎が弱いですね。
その部分が4.06mありますので 4.06×0.64=2.60W/Kです。
全体の熱貫流量が152.7W/Kですから1.7%ですが、ほかに比べて極端に低いところがあるとそこだけとても冷たくなります。結露などの恐れも出てきます。少し怖いですね。

最も気になるところは外壁です。

0.43W/㎡Kと外気に面する天井などに比べてもとても大きい値です。

窓やドアは開口部ですので除外して考えます。床も床下の比較的温度が安定している部分に面してますので今回は抜いてみましょう。

そうすると外壁は天井の倍も熱が漏れやすいことが分かります。

さらに問題となるのは、外壁は一番面積が大きいということです。面積まで考慮して熱の逃げを見てみましょう。

全体の逃げる熱の45%外壁から逃げることが分かります。

窓が28% 天井が9%です。

窓が多いのはやむを得ないとは思いますが、壁がもう少しどうにかならなかったのかと思います。

まとめ

正直に書いてくれとオーナー様より言われていますのであえて書かせていただきます。住友林業さんが怒るかもしれませんが事実なのでやむをえません。

断熱量が平均的にまあまあのレベルでとどまっています。

外壁は一般的に建てられているハウスメーカー以外のところより見劣りします。高断熱とはいえない一般的なレベルです。正直に言うと高性能グラスウール(λ=0.038)100mmですから高断熱を唱っている建売住宅でもこのレベルと同じです。むしろビックフレームがある分、断熱材が入らなくなりますから不利でしょう。

天井は建て売りより少し良いです。ここで全体の数字を下げることに寄与しています。建て売りだとグラスウール100mm位でうまくクリアーさせているところもあります。それに比べればきちんとしています。屋根裏は暑くなったり放射冷却の影響なども受けやすいですから少し良くしておくのは当然ではあります。

窓はオーナーさんがオール樹脂サッシに変えて正解です。これが標準のアルミ樹脂サッシだったら結露などの心配も増えたかもしれません。

基礎、土間に関しては「どうしてここまで薄くするの?」と思ってしまいます。面積が小さいので数字には表れてきませんが、ほかに比べて特別に性能が悪い場所を作ることは危険だと思います。

外壁に関してもう一つ心配があります。現代のエアコンの使い方の問題です。
近年はお客様がたくさんエアコンを使いますし外気温は高温高湿度となります。

グラスウールの内側の防湿フィルム面に夏型結露の恐れがあるかもしれ無いと思ったのですが大丈夫そうでした。一瞬結露するかもしれませんがすぐ乾くようです。結果は設定により大きく変わります。割と厳しめに考えた結果ですので心配ないです。
住友林業さんできちんと検証していると思うので心配すること無いですね。
我々は安全を考えて可変透湿シートにしたりすることもあるので少し心配してしまいました。断熱材がそれほど厚くないので問題にならないかもしれません。
それでも夏のエアコン使用時に過度に温度を下げ過ぎない方が安全ですね。

冬の内部結露に関しても全く大丈夫そうです。耐力面材を使ってないですし期ずれパネルで通気もとれていると思われるので心配ないですね

結論としては、
大手ハウスメーカーが自信を持って 「これで高断熱」と言ってしまうのかと思うと残念です。
我々とくらべて大きく見劣りします。
それでもお客様を納得させることができるのですからすごい営業力だと思います。

ここまで言ってしまい申し訳ございません。
事実のみおはなししているつもりです。
間違いがございましたら訂正いたしますので、ご連絡いただければと思います。

断熱・気密

住友林業の家の絞殺をする前におさらいです。

現在のH28基準では 断熱量を外皮平均熱貫流で評価します。
いわゆるUA値です。

建築省エネ機構

簡単に言うと 壁や床、屋根 、天井、基礎、窓の断熱量の平均値です。

日本を8つの地域に分けて基準を決める

この断熱基準では日本を8つの地域に分けています。

IBECホームページから引用

5地域から7地域までは UA=0.87W/㎡kです。オレンジ色からピンクまでですね。範囲がとても広いです。
とても同じ気候とは思えません。秩父のように朝の最低気温がマイナス10度近くになるところから、霜も降りない。氷も張らない。プロ野球のキャンプをするような暖かい地域まで同じです。
当てにならないのが分かりますね。

これは暖房度日という指標を元に決められたものなのでかなり大雑把なのです。冬の暖房期間すべての日を暖房目標温度と一日の平均気温の差で積算します。

海沿いは温度が安定しているので良いのですが、内陸のように朝と日中の温度差が大きい地域では、影響が全く異なりますので、実際におうちを作る時には注意が必要ですね。私は気象庁のデーターを調べ最低気温平均に応じて地域を選べ直した方が良いと考えています。

秩父市は青森市よりも朝が寒い!

地域区分が当てにならないのを分かっていただくために参考に秩父市と青森の温度データーを記載します。


昨年の1月の最低気温平均です。秩父がマイナス4.0℃ 青森市がマイナス3.1℃ですね。秩父の寒さは一部の北東北より寒いのです。

埼玉県ですと鳩山近辺も寒いです。

昨年は秩父よりも朝、寒かったようですね。

このように地域によって様々です。
朝寒いのを我慢できれば良いのですが、朝起きた時にストレス無い生活をしたいなら朝の冷え込みをターゲットに家づくりをした方が良いですね。

住友林業の家の外皮平均熱貫流率は?

今回の住宅の計算書を見ますと外皮平均熱貫流率は0.47W/㎡kと記載されています。5地域の国の基準は0.87です。国の基準を満たしていますので等級4で最高性能ということになります。サッシを標準から変えて良かったです。
皆さんは国の基準は最低基準だとご存じでしょうからあえて国の基準についてのお話はいたしません。
この基準をクリアーしていることを自慢げに最高基準を満たしているので高気密高断熱だとハウスメーカーが言っていたとしたらとても残念です。
この基準は20年も前に作られた基準が元になっているからです。

実際にカタログなどで東北地域レベルの断熱性能などと書いてあったりしますが、そもそも、様々な理由でそれではあまり暖かくならないのです。

HEAT20のグレード

国の基準があまりにもお粗末なので、別に推奨水準を定めようという団体があります。HEAT20という団体です。


http://www.heat20.jp/

現在ではきちんと断熱をしている住宅会社は、国の基準はほぼ無視して、この基準で判断されることが多くなっています。

HEAT20ホームページから引用

5地域 G1グレードで0.48 G2グレードで0.34です。

この家はG1グレードは満たしていることになりますね。この点ではまあまあと言っても良いと思います。サッシが標準だとG1にはならなかったともいます。

G1グレードのシナリオはどういうものなのでしょう。

G1グレードはどういう基準?

G1グレードはモデルプランにおいてこのような内容で決められています。

エアコンはLDKで14時間 寝室で3時間 子供室で3時間つけます。
ずいぶん長いですね。夜寝ている時は消してまた朝つけます。

そしてお部屋の体感温度(輻射面温度なども考慮した温度)が15℃以下に20%位はなってしまう。たまには15度以下になるけどまあまあ15度以上だと言うことですね。
簡単に言うと朝15度以下になる日がたまにあるということです。

これだけエアコンつけるのだからそれほど断熱性能が良いといえませんね。

下の段の表では10度以下にはならないレベルと書いてあります。
それまでに寒い家にお住まいでしたら「新しい家は暖かいね。」ということになりますが、それほどでも無いですね。

このレベルでは吹き抜けは危険。光熱費もかかる。

実は 20年前に建てた私の家がこのレベルなのです。
ですから住み心地などが大体分かります。

このレベルですと 吹き抜けは危険です。
気密性能がとれていても断熱レベルが低いため温度ムラがかなりできてしまいます。私の家ではシーリングファンを回しっぱなしにしないと上下温度差がかなりつきます。現在の高断熱の家ではほとんど温度差はつきません。


このG1のシナリオで暖房時間13時間と書いてありましたがそれほどでは無いにしても 相当エアコンもつけますから、暖房費もまあまあかかってしまいます。
部分完結暖房のシナリオですから吹き抜けは想定されていません。
今回の調査のおうちは吹き抜けはありませんので良かったですが、階段室を通って2階に浴室脱衣室という間取りなのでやはり少し多めに暖房は必要になるでしょう。

20年前に建てた今回調査の家と同レベルの私の家で、なんとか今建てている超高断熱のおうちのように暖かい生活をしようとエアコンつけっぱなしの連続運転をしてみると電気代もとてもかかります。1月に1ヶ月間エアコンをつけっぱなしにしてみました。
518kWhです。26円・kWh出計算してみると 暖房だけでなんと13312円 かなりかかっています。
さすがにこれだけ暖房すれば脱衣室でもトイレでも24時間寒くは無いです。

しかし暖房費以外にも決定的な差があります。

住み心地が違う。その違いは表面温度

断熱性があまり良くないおうちは、エアコンをつけっぱなしで頑張れば温度だけは、超高断熱のおうちと同じように室温を20℃くらいに維持できます。
しかし、決定的な差があります。
それは表面温度の違いです。
暖かい家ではどこでも表面温度が同じで優しく包まれている感じの暖かさなのですが、断熱性の低いおうちでは表面の温度を補うために少し暖かめにしないと暖かいと感じないことが多くそういう感じがしないのかもしれません。

室温と同じくらいに表面温度がなっていると快適だと感じますね。

温度ムラが無く室温と同じくらいに表面温度が維持できるのは 私の経験上G2レベルくらいが必要と考えています。

まとめ

このレベルでも基準はクリアーしていますので高断熱というのは嘘ではありません。

しかし、お客様は暖かく住み心地の良い家を希望したとのことです。

ハウスメーカーさんは自信を持って「十分暖かい。」と説明したとのことです。

このお客様はたくさん勉強している方なので、もちろんUA値などのことは理解していて、現在ではUAが0.3位の家があるのも知ってらしたそうです。

それでも、これほど大きなハウスメーカーが自信を持って「この仕様はすごいから十分に暖かいから大丈夫。」と言ったのを信じてしまったとのこと。

本当の暖かい家を求めていたのにちょっと気の毒です。

私の私見ではありますが G2レベルをクリアーしていれば、パッシブハウスレベルまで行かなくとも暖かさの体感はとても良いと思います。もちろんパッシブハウスレベルの方が良いのは当たり前ですが。

これから建てる皆さんは是非G2レベルをまずは目指してください。