断熱構成を考える上で必要なこと
長年にわたり パッシブハウスレベルの家を作っています。
そのため、当社の基本的な断熱構成は、様々な試行錯誤から「これだ!」という研ぎ澄まされた仕様になっています。
断熱性の確保
気密性の確保
施工性の確保
構造安定性の確保
コスパの確保
そして、壁体の健全性の確保が重要です。
これまで、様々な断熱に取り組んできました。メジャーなところはほぼ試し実践してきました。
それぞれ良いところも、良くないところも有りますので、屋根、壁、基礎など利用する部位に応じて性質を考え上手く使いこなしていくわけです。
パッシブハウス性能確保に必要な断熱量
パッシブハウスを作るには、緻密なシミュレーションを行い、暖房需要、冷房需要などを計算します。
当社レベルの基本的な断熱量があり、きちんと日射取得をすれば秩父の寒さでもパッシブハウスが可能です。外皮性能はUAで0.2~0.25位が多いようです。
ばらつきがあるのは、取得日射量や家の形や大きさによることで外皮の面積が違うからです。
パッシブハウスの性能は、エネルギーベースでの計算です。
外皮性能は良いに越したことはありませんが、日射熱が取れない場合はその分、暖房が必要になります。
パッシブハウスの場合には、年間の暖房需要が15kWh/㎡以下となっていますから、そこまでの暖房に押さえながら、外皮性能をコントロールしていくわけです。
日射熱が上手く取れる住宅は、断熱材が薄くできるということです。
さらなる断熱補強が必要になる場合も!
日射熱が上手く取れない場合は、逆に外皮性能を上げていく必要があります。
今まで決めてある断熱構成があるなら、その断熱材の厚みを厚くするのが基本でしょう。
その方法なら、性質はあまり変わりませんから、一般的には割と安全でしょう。
ですが、断熱構成の中間に合板などの透湿抵抗の高い部材などがあるときには、注意が必要です。
断熱材の厚さの変え型によっては、結露する恐れがあります。
とても怖いですね。
外側の断熱材の厚さを厚くするのか?
内側の断熱材を厚くするのか?
地域によって違いが大きく出るので、地域の気象データーを参考に計算してみましょう。
構成まで変えた断熱補強
時には暖房需要が大きくなりすぎて、断熱構成まで変えなくてはならないこともあります。
今回の事例はそうでした。
そのような場合は、大変な量力がかかります。
断熱材の費用が上がるのはやむを得ないのですが、そのことにより大きくコストが上がってしまうのは避けなければなりません。
施工性の検証もとても大切です。
しかしそれより重要なのが、壁体の健全性を保つこと。
将来、壁や屋根が腐ってしまっては大変です。
当社の今までの断熱構成は、シミュレーションや実測などを行い安全性が解っていますが、新しく取り組む方法が安全かは、誰もやってことが無いですから慎重に進めなくてはなりません。
様々なパターンでのシミュレーションをしてみる
ありがたいことに、今は精度の高いシミュレーションソフトがあります。
当社で使っているのはWUFIと言うソフトです。
このソフトでシミュレーションした結果通りになるのは、これまで当社で実測してきて解っています。
今回はこのような断熱構成としてみました。
気象データーは秩父を選択
気象状況は温暖化もありますし、思いがけない寒い年もありますので、その気象データーを元に暖かめにしたり、寒めにしたり違うバリエーションも試してみることが重要です。
たまにWUFIの気象データーは少し古いので役に立たないという人がいますが、地域による温度変化の傾向は気象データーでよくわかりますのでとても精密だと思います。
適当なデーターで計算するより、それをつかい、暑い年とか寒い年とか、それ以上のシミュレーションをしておくと安心ですね。
内部が乾いていくと安全
壁体内が湿っていると、カビが生えたり木材が腐ったりしてしまいます。
建物そのものが壊れたり、健康に害があったりすると大変ですね。
ですから壁体が乾いていくことを確認することが大切です。
この構成は全体的に乾いていきますね。
一番心配な中間の合板はどうでしょうか?
こちらも大丈夫そうです。
初期は湿っている合板を使ってしまったとしても乾いていくと言うのが解ります。
安心ですね。
長期間に渡って安全性を確保するには、長い間に乾いていくという断面構成が必須ですね。
さらにワーストケース
工事は完璧というわけにはいきませんし、長い間には経年変化もありますね。
特に木材はのびチジミや狂いがあります。
そのとき、雨漏りとしては確認出来ないレベルの雨水が浸入することがあるかも知れませんし、室内の湿気が断熱層内に入ることもあるでしょう。
そのようなもしもの時があったと場合でも、安全でしょうか?
水道の蛇口マークが湿気の流入です。
左から まず、通気層はかなりの湿気が入ります。
そして、雨水が浸入し合板に水が来た場合。
そして室内側から湿気が直接入ってしまった場合です。
このような、過酷な場合もあるかも知れません。
全体として乾いていくか見てみましょう。
安全そうですね。
見よう見まねは危険
一般的に良くあるレベルの断熱構成でも、高断熱になると危険な場合があります。
そこまでの厚さを想定していない場合が多いからです。
暑くなると断熱性能は良くなり熱は遮ることができますが、湿気を遮ることができない場合もありますし、遮りすぎてそこで滞留してしまうこともあります。
断熱材の構成は本当に難しいです。
そこはしっかり検討し、お金をかけなくてはならないならケチらない方が良いですね。
どこまで考えて仕様を決めているのか、工務店を見極める上でとても大切ですね。