高断熱住宅に住むと健康に良いというのは本当でしょうか?
多くのハウスメーカーや工務店が「高断熱住宅に住み替えると健康になる」という話をします。
病気が治るなら、家族のために家を建てよう!
と、決断する人も多いでしょう。
温かい家は病気が治るというのは本当なのでしょうか?
岩前先生の研究 健康改善効果
まずは良く目にする有名なグラフです。
HEAT20でとてもお世話になっている岩前先生の研究です。
グラフは横軸が断熱性能です。 左に行くほど高断熱です。
高断熱住宅の方が改善率が高いですね。
様々な研究で、断熱性が高くなると、様々な病気の改善がなされることが多いと言うこと解っています。
病気がよくなる可能性が高いと言うことは、間違いなさそうです。
でも、このグラフでは、どのくらいの人がどのくらい改善したのかが解りません。
高断熱住宅への転居が子育て世代の女性の健康に及ぼす影響
上のタイトルの論文が最近発表されました。
慶応大学の伊香賀研究室で出したようです。
20才から49才の266名の調査です。割とサンプルは多く信頼性も高そうです。
子育て世代の女性は、仕事や家事、育児など忙しく、自身への健康意識が薄れやすく、体調が悪くなりやすかったり、不調を訴える人も多いので女性中心に変化を見たようです。
体の不調を訴える女性は多いですね。
調査対象の住宅の断熱レベル
建物は 本当に高断熱の等級6、等級7を対象にしたとのこと。
等級4やZEHレベルの等級5ではないところが評価出来ます。
このレベルでは高断熱とはとてもいえません。
今回はきちんと高断熱の住宅で調査したと言うことです。
平均で3地域 UA=0.27W/㎡k
4地域 UA=0.29W/㎡k
5地域 UA=0.33W/㎡k
6地域 UA=0.37W/㎡k
7地域 UA=0.43W/㎡k だそうです。
一般的なレベルと比較すると、良い断熱だと思います。
実際の暖かさの感じ方
転居後は、様々な部屋であまり寒さを感じなくなっています。
乾燥感は住み始めは変かなく乾燥を訴えていますが、数年経つとなれるようで、乾燥感を訴える人は減っています。
暗さや匂い藻減りますね
今回の内容とあまり関係ないですが、面白いのは外からの視線が改善しないことです。この辺に注意して設計したいですね。当社では、透明ガラスをあまり使わず、視線の気になりにくい型板ガラスを多めにしています。良かったです。
住まいでの諸症状の変化(女性)
それでは本題です。
体調は改善するのでしょうか?
これを見ると、明らかに改善した人がいることは解ります。
しかし、それほどの割合ではないですね。
例えば「体がだるい」という人を見ると、毎日のように体のだるかった人が15%位が12%ぐらいに減っているだけに見えます。
頭痛に至っては増えているようにも見えますね。
そのほかも大差なく、微妙な現象です。
大きく変化が見えるのは「手足が冷える」と言うところくらいでしょうか?
睡眠の質の変化
睡眠の質は 女性の改善率が良いですね。
およそ50%悪いという状況から、25%位まで減っています。
男性は 25%位から20%位です。
特に女性は、よく寝られる人が多くなっています。
ただこれは、家を建てると決断したときには、赤ちゃんができた頃で、家ができたときには少し大きくなっているので夜泣きなどの対応が減ったとかは、データーから見えません。そういった生活の変化の影響も多そうです。
主観的健康状態の変化
健康になったかどうか?と言う問いです。
全く良くない、良くない、あまり良くないと言う人が
女性は25%位から22%位
男性は24%位から18%位
思ったほど変化ないですね。
今回の論文で思うこと
高断熱住宅にして、温かい家にすることで住み心地は本当に変わります。快適になるのは間違いないです。
そして体の負担が減り、体調が良くなる人が多いのも事実のようです。
しかし、皆が全て、体調改善するわけではありません。
住宅会社は、宣伝のため温かい家にすれば健康になるようなことを言いますが、全ての人に当てはまるわけではなく、あまり変化ない人の方が多いことも事実です。
今回の論文では、そのあたりのことが明らかになったと思います。
「健康になるために高断熱住宅を作る」と過度な期待をすると大変です。
我々住宅会社も説明に気をつけなくてはならないですね。
これから家を建てる人は、住宅会社の都合の良いデーターでの説明には気をつけてくださいね。
実際の様々な知識、説明なしに、この辺を強調して来る住宅会社には、ご注意ください。
きちんとした数値などで比較出来ることが大切ですね。
「当社の住宅は暖かいですよ。」
「この断熱レベルで十分ですよ。」
「長持ちしますよ。」
「地震に強いですよ。」
そして
「暖かい家は健康になりますよ。」
そうした、抽象的な話は、解らないですね。
きちんと比較検討したいですね。
今回の論文は、私もとても勉強になりました。