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髙橋建築

断熱性能はどこを目指すべきか?

断熱・気密,日記・想い

一般の方から、断熱性はどこを目指すべきか質問があります。

これを言い切るにはいろいろな視点からの判断で異なると思いますので大変なことです。

断熱量は多い方が良いのか?

まずはコストなどのことを考えず、断熱量は多い方が良いのか?
という問題です。

多ければ多いほど、外と中の温度の出入りを遮断します。熱の損失が少なくなると言うことです。
単純に冬の暖房が少なくて済みます。
場合によっては秩父パッシブハウスのように冬場に全く暖房がいらない。エアコンもストーブもこたつもいらない家をつくることもできます。
省エネで光熱費もとても安くなります。

こう考えると断熱はたくさんした方が良いと言うことになります。

歴史的な背景から今後の断熱量の変化。

時代の流れとともに断熱量も変化してきています。
どんどん多くなる傾向にあります。

これは、ほかのことでもそうですね。地代に応じて変化していくのです。進化していきます。

たとえがふさわしいか解りませんが、情報を伝えるのに のろし→ラジオ→テレビ→インターネットと変わってきました。
今更 のろしには戻れません。でもラジオ等もまだたくさん利用されています。情報量は少なくてもシーンによってはラジオの方が良い場合もありますね。

断熱量も 新省エネ基準ができ 平成11年には次世代省エネ基準 25年、28年基準、と少しづつ進化してきました。
その流れをより強化したHEAT20のG1、G2というのも提唱され,広く普及し始めています。昨年にはG3も発表されました。
国際的には パッシブハウス基準もあります。

現在つくられている断熱等級4は 平成11年基準とほぼ同等です。
なんと20年前のレベルです。
平成11年当時、そんなに断熱するのはお金の無駄と言って、新省エネ基準レベルでほとんどの家が作れていました。

ですが,世の中は進化し現在ではG1が当たり前。G2で家をつくる人もいます。

10年、20年前にきちんと新しい技術を取り込み 次世代省エネ基準で建てた方は、ずっと温かい家に住めましたし今建てられてているほかの家とさほど変わらないので建て替えを考えるほどでは無いと思います。

しかし、わずか20年しかたたないのに、そのときに古い技術で建ててしまった方は、もう建て替えたくなってしまいます。
実際に当社のお客様でも20年で建て替えしたいと言う方がおります。

いま、ギリギリの基準で建てると、10年後、20年後には古びた仕様となり建て替えたくなってしまう恐れがあるのです。
家は、自動車やスマホのように買い換えできませんから、せめて20年くらい先を見込んで考えた方が良いのでは無いでしょうか?

今はこれで十分と感じても、すぐに不満が出てしまう恐れがあります。
そういう観点から考えると 最低G2 できればG3 パッシブハウスとした方が良いと思います。

エネルギーの観点から

断熱すればするほど、省エネになり,ランニングコストは減ります。
どのくらい減るのでしょうか?

これは HEAT20のグラフを見るとわかりやすいので、それを見ながら説明します。 一番多い6地域のグラフで説明します。HEAT20のホームページからの抜粋となります。

http://www.heat20.jp/members/data/2019/18-3_suzuki_sunagawa_nonaka.pdf
秩父地域の方はこれよりももっとエネルギーを使いますので注意してください。

青いラインが 戸建て住宅 赤いラインが集合住宅です。
戸建ての青いラインで説明します。

断熱された暖かいおうちにすると皆さん家中を暖かくすると思います。
リビング階段や吹き抜けをつくることも多くなりますね。
そうすると家中暖房するようなかんじになります。

それまでは、LDKしか暖房していなかったり、子供部屋や寝室などを暖房するレベルで廊下やトイレなどは暖房せず寒いままでした。

それが断熱されたおうちでは家全体を温めるようになるのですから、少々の断熱では暖房費が増えてしまうのです。

グラフを見てみましょう。
基準はUA=0.87 断熱等級4 約平成11年に作られた基準のおうちを、今まで通り LDK 寝室などを人がいる時だけ暖房した時です。
そのときのエネルギーを基準に0%とします。


人がいるお部屋を 人がいる時だけ暖房する という設定です。
ほかの部屋は寒いですし、お部屋に入って暖房が効くまでは寒いです。
さらに熱損失は大きいですから、輻射面温度は低くあまり快適な環境とはいえません。しかし人がいるお部屋だけは目標温度に達します。

その基準で建てられた家を全館暖房したら。暖房費が2.5倍

そのレベルのおうちを、あまり寒くないように全館暖房したらどうなるでしょう。吹き抜けがあったりリビング階段だったりするとこの条件に近くなりますね。

このグラフが表すように 現在の最高等級である等級4の断熱をしたとしてもおうちの中全体に暖かくすると、140%位。
なんと 暖房エネルギーは2.5倍くらいに増えてしまうのです。
恐ろしいですね。

暖かく快適な家をつくったつもりが、暖かくするには今までの倍以上もエネルギーを使ってしまう。

このレベルの家では、リビング階段はつくらない方がよさそうですね。
しかし、まだ多くの家がこのレベルです。
ハウスメーカーの営業マンは「断熱最高等級の家ですから省エネで暖かい家ですよ。」と説明するでしょう。

G1グレードで断熱したら5割増し。

そして次は G1グレード。省エネ基準レベルのおうちにちょっとガラスでも良くすれば到達できるレベルです。

1.5倍くらいのエネルギーを投入すれば 全館連続暖房も可能です。
ハウスメーカーのレベルがこのレベルですね。
まだまだ、このレベルではエネルギーを使いますから、このレベルで建てた人はもったいなくて全館連続運転にできずに、寒いのを我慢しながら住む人も多いようです。

せっかく造ったおうちなのに快適な生活が送れないのはかわいそうですね。
10年後、20年後には大半の人が建て替えたくなってしまうのでは無いでしょうか?

G2グレードで断熱したら。ほぼ同じ

次にG2グレードレベルにしてみましょう。私が考える最低レベルです。

このグラフを見て解る通り、全館連続暖房をしてもエネルギーの増加は1割以内に抑えられます。
光熱費はさほど気にせず、家中どこでも暖かいというのを体験できるわけです。

G2レベルまでしてやっとこれが実現できます。私が最低G2と言っているのはこの理由もあるのです。

いよいよG3 ほぼ半分の燃費

おすすめレベルのG3です。

やく40%削減できます。大体半分ですね。

ここまで下がると、エネルギーが減った。とても省エネだと大きく実感できるでしょう。

ということは、全館連続暖房をする限り、G3に近い性能にしないと エネルギー、ランニングコストは減ったと実感できないことになります。

我慢しながら冷暖房をしないとさほど省エネにならないと言うことです。

ですから HEAT20では G3を提唱し始めたのでしょう。

G2を超えてG3に近づくほど、体感性能は変わります。
この辺は実際に住んでみたりつくったことのある人で無いと解りません。
つくれなければ、知らないほうが幸せかもしれませんね。

G2,G3の性能は?

HEAT20のホームページから抜粋したHEAT20の性能表です。

UA値
1、2,3地域で0.20
4,5地域で0.23
6、7地域で0.26
となります。

当社のある秩父地域は4,5地域なので0.23ですね。
これは当社でもかなり大変です。

断熱を補う方法 いろいろあります。

コストの問題もあります。家の大きさや,形などでそこまでUA値が上げられないこともありますね。

暖かさや省エネ性は断熱だけでは決まらないので、ほかの要因も重要です。

ほかの要因をきちんと考えれば、断熱量は少なくすることができるともいえます。

大きな要因の一つに日射があります。
太陽の熱は無料ですし、とても膨大です。

きちんと太陽熱を取得しその熱がため込めれば良いのです。その分断熱は少なくて済みますね。

家の形や間取りも重要です。
UA値はあくまでも壁や床、屋根や窓などの断熱量の平均値です。
この数字が良くても、おうちがでこぼこしていて壁の量がとても多かったりするのではダメですね。
その反対に、とてもシンプルにつくられた、外に面する面積が少ないおうちは有利となります。
間取りによっては室内の空気が大きな対流が起きてしまう場合もあります。そういった場合には、大きく熱が拡散し余分にエネルギーを使ってしまう場合もありますから注意してください。

換気システムで熱を回収する方法もあります。健康に住まうには、24時間換気が必須です。
換気をすると言うことは室内の熱を捨てていることと同じです。
その熱を回収できればその分暖かくなりますから、断熱は少なくてすみますね。

まとめ

ほかにも理由はありますが、私が現時点でおすすめできる断熱性能は最低G2、できればG3ということになります。

おまけ

気密性能に関しては 換気の仕組みなどで違いますが私は最低 C=0.5以下
目標0.3くらいにしたいです。
現状大半が0.1台ですが。

Posted by 髙橋 慎吾