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髙橋建築

第三種換気の利点と欠点

換気・空気

第三種換気とは?

ひとが住んでいると室内の空気は汚れますね。
そこで現代の住宅では換気は必ず必要です。
スカスカのおうちなら必要ないかもしれませんが、普通の作り方をすると空気の汚れは出し切れません。
そのため、現在の建築基準法では室内の空気を2時間に1回入れ替えることが義務づけられています。

換気の種類は換気扇の使い方で第1種、第2種、第3種と分けられます。

第1種は外の空気を取り入れるのも家の中の空気を出すのも換気扇を使う方法。
第2種は外の空気を換気扇で取り入れ、室内の空気は自然に出す方法。
そして今回取り上げる第3種換気は、外の空気を自然に取り入れ 室内の空気を換気扇の力で出す方法です。

ポイントは 換気扇の力で室内の空気を出すので、室内が負圧になり 結果的に穴が空いているだけの自然給気口から外の空気が引っ張り込まれると言うことです。

換気扇の外に出す力が強ければ強いほど、給気口や隙間から空気が自然に引っ張り込まれるわけです。

給気口と排気の換気扇はバランス良くつけましょう。

バランスが崩れると換気扇が空回りしたり、換気ムラが発生します。

最後はダーテイーゾーンから

常時人のいる場所にはきれいな空気が必要です。ですからリビングや,寝室子供室などの居室に外からの新鮮な空気を取り入れます。

そしてその空気をトイレや洗面脱衣室や浴室などの匂いの発生する場所や湿気の発生する場所から排気するように計画します。

上手に空気の流れを計画することが大切です。

空気の汚れと流れをイメージしましょう。

気密がとれていないと全くダメ。

気密性能があればきちんと空気が流れます。

気密性能が無いと!

いろいろな隙間から空気が出たり入ったりしてしまいます。
きちんと換気が制御できませんね。
空気が汚いところができてしまいますね。
寒い空気が出たり入ったり。とても寒いです。

冷たい空気が直接入ってくる

気密がとれているとしても、給気口から入る空気は、外の空気そのままです。

寒い冬に外が氷点下なら、なんとマイナス温度の空気が入ってきてしまうのです。

この問題点は、高断熱に熟練した設計者なら上手に解決することもできるかもしれませんが、かなり難易度が高いです。

残念ながら大手ハウスメーカーの設計でも全くできていない場合が多く残念なことです。

窓開けすると!

トイレの窓、脱衣所の窓を開けるとどうなるでしょう。

トイレの窓から空気が入り、直接トイレの換気扇からすぐに空気が出て行きます。トイレのところだけ循環してしまうわけですね。
そこだけで、「吸って吐いて」をしてしまいます。
脱衣所の窓から空気が入り、脱衣室の換気扇から空気が出て行きます。
これではリビングの自然給気口から空気を引っ張れないですね。
窓開けすると 計画通りに空気が流れません。

2階建てでは?さらに難しい。

2階建ての場合を考えてみましょう。

最近の住宅では1階にも2階にもトイレがありますね。 そのため1階に給気口と排気口 2階にも給気口と排気口と計画される場合が多いです。

上下の圧力差の発生

暖かい空気は上に向かって行きます。

そのため室内では下から上に向かって空気の流れが出てしまいます。

この空気の流れによって1階は負圧になり外から空気が入って来やすくなり、2階は外に向かって空気が出て行きやすくなります。

そうするとどうなるでしょう。

本来空気を出すための1階のトイレの換気扇からは空気が出にくくなり、1階のリビングには外の空気がたくさん入ってきます。

2階の寝室や子供室には外から空気を取り入れる給気口があるのですが、内外の圧力差のために空気が入りにくくなったり時には空気が出て行く口になってしまうこともあります。

きちんと換気が行われない可能性が高いですね。

本来の空気の出入りが制御できないこの現象は、温度差だけで無く、屋外で吹く風などでも起こります。
空気が出るための面に風が当たれば出にくくなったり、空気が入る面が風下になれば、家の中に入らず引っ張り出す口になってしまうのは,容易に想像できますね。

上下に空気の流れができてしまうと

暖かい空気が上に行き隙間から冷たい空気が入ってくるとどうなるでしょう。

上下の温度差が大きくなりとても寒くなります。

暖房しても頭が熱くなり、足下が寒いという 不快な状態になりやすいです。

第三種換気はとても難しいですね。

それでも第三種が多い理由

これほど問題の多い換気方法にもかかわらず、ほとんどの住宅会社が第三種換気を採用するのはなぜでしょうか?

それは 圧倒的なコストの安さです。

第一種換気では数十万円かかりますが、第三種換気は数万円ですみます。
全く違いますね。

多くの住宅会社が 実際に換気が機能しているか?快適性が確保できるかはほとんど興味が無いのかもしれません。

ひどい話ですね。 私もそのような家に出くわすことが度々あります。
とても残念です。

もう一つの理由に、施工性があります。

第一種換気は 複雑なダクトの設置が必要です。

しかし第三種換気では、ほとんどの場合はダクトの必要は無く、もしダクトを使うにしてもダーティーゾーンのみですからとても単純です。

設計も楽

入り口と出口をつけるだけ。ダクトが無ければ、計算もほとんどいりません。
ダクトがあるとパイプの圧力損失などの計算が必要です。

メリットは無いのか?

第三種換気の良いところはないのでしょうか?

それでも、高断熱のスペシャリストが第3種換気を選ぶこともあります。

それは消費電力の少なさです。ダクトを使わないシステムの場合わずか 数Wですみます。

第一種換気は給気も排気も換気扇を使います。消費電力は単純に倍になりますね。

さらに第一種換気の場合は、熱交換換気とすることが多いですから,より圧力損失があり、モーターのパワーが必要です。50W位必要です。

単純な第三種換気の場合、とても省エネですね。

しかし冷たい空気を暖めなくてはなりませんので冷暖房エネルギーはたくさんかかりますので一般的にはエネルギーはとても増えてしまいます。

換気での熱損失があっても、室温が下がらない、温度ムラのできない、すごい設計と、ミスの無い施工。それができれば考えても良いでしょう。

かなり難易度が高いですね。私も場合によっては第三種換気を否定しませんが、高度な設計、高度な施工、きちんとした使い方。
長年の経年変化による気密の維持などたくさんのハードルがあります。
それならば、確実な計画、施工ができる第一種熱交換換気を選ぶのが無難だと思います。

結論

第三種換気は、難しい。大きなリスクがある。

それでも値段優先ならば、覚悟して採用。

私は確実な性能住み心地を重視するため使わない。

Posted by 髙橋 慎吾