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髙橋建築

軒裏換気口は設置すべきか?

換気・空気,耐久性・災害対策

通気は大切

通気層には大切な役目があります。

壁体内や 小屋裏の湿気を排出すること、また、熱を逃がしたり雨水の侵入を防いだりしてくれます。
いろいろな役割がありますね。

その役割を果たすためにも、きちんと通気層を作り、通気量が確保されることが大切です。

屋根の通気層の写真です。
当社では、できるだけ空気が流れやすくなるように89mmの通気層を確保しています。
さらに熱を反射させる遮熱タイプの透湿シートを使っています。
屋根の熱を逃がしたり、湿気を逃がしたり、3次防水層としても期待しています。
信頼性のある透湿防水シート、タイベックシルバーを使っています。

壁の通気層

18mmの通気胴縁で通気を確保。薄い胴縁を使っているところもあるので注意が必要です。
サッシと胴縁の隙間も確保し、縦に空気が流れるようにしています。

こちらもタイベックシルバー。
長持ちすることが特徴です。多くのハウスメーカーが安いシートを使っています。
ローコストビルダーはほとんど一番安いものです。
劣化が早く、防水性能があまり期待できなくなります。
外壁の雨漏り補償は、工事ミスなどによる場合10年しかありません。
材料の劣化などは免責とされていると言うことがほとんどで、取り替えには大金がかかります。
長持ちするものを選びたいですね。

それでは通気層の役割をまとめます。

壁体内の湿気の排出

冬期は屋内の湿気が壁体内に入っていきますから、壁体外側に通気層を設けて外気を通気させ、壁体内の湿気を排出させます。
通気量が確保されていないと壁体内に湿気が蓄積され、壁の内部でカビが発生したり、柱などが腐ってし編むこともあります。

熱を遮る

通気層は空気の層です。それだけでも断熱効果がありますが、温まった壁や屋根を、空気を通し入れ替えることで冷ます役割もあります。
太陽が当たると、屋根や壁はとても暑くなることがありますね。
たとえ断熱材があっても、外壁や、屋根が60℃とかになっていたらたまりませんね。
熱を少しでも遮りたいですね。

雨漏りを防ぐ

外壁で雨を防ぐのは基本ですが、万が一、外壁から雨が入ってきたら?

通気層があることで、そこから水が排出されますので安心です。通気層の内側には、透湿防水シートがありますからそれ以上中には入りません。
断熱材や 柱などを守る 2次防水機能を果たしています。
外壁が一次防水。
通気層の透湿防水シートが2次防水というわけです。

図は屋内の湿気が壁体内を通り通気層から排出されるモデルです。

冬期に内部結露する例です。日中は壁が温められて通気層は上昇気流
夜は冷やされて下降気流 あるいは 断熱レベルが低い場合には室内の熱の漏れで上昇気流かも知れません。

屋根も同じですね。

基本的には、通気層の換気口は 入り口と出口が必要ですから、壁は上と下、屋根には軒先と棟側の2カ所に 換気口が必要です。

こんなイメージですね。

壁は壁

屋根は屋根

で通気させます。

ですが軒裏から換気させる必要があるでしょうか?
壁の下から空気を取り込み 屋根の上部から排出させたら?

このようなイメージです。
昔からこの考え方はありました。

合理的ですね。

きちんと通気量が確保され、湿気が排出できればこの方が様々な利点があります。

軒裏換気口を無くすメリット

軒裏換気口がいらないのでコストが抑えられる。

軒裏換気口は一つ数千円しますから、数万円のコストダウンです。
材料費だけでも大きく違いがあります。

施工量が減る

職人不足で、工事が進まない現場が増えています。
職人の確保も大変です。

火災時の延焼のリスクが減る

お隣が火事になったとき、屋根が燃えやすいですね。
屋根に火が移るとすぐに建物内へも燃え移ります。
火が入りやすくなる穴はできるだけ少ないに越したことはありません。

軒裏換気口は本当にいらないのか?

このように軒裏換気口を付けないことで良いこともたくさんありますが、最初にお話しした、通気量が確保できるかが問題です。

今年の建築学会で 近畿大学の藤田先生が、パナホームと実験をした論文が発表されていました。
私もとても興味がありましたので、聞かせてもらいました。

そして、昨日もHEAT20の躯体ワーキンググループでご一緒させていただき、さらに詳しく教えていただきました。

軒裏に通気口がある場合と無い場合 無い場合での実験です。
データーの表やグラフ、検証結果など公開でき無いのが残念です。

通風量が少ない通風量が少ない

結果は、ほとんどの場合、どちらの方法でも通気量はかなり確保されていました。
しかし、冬の夜間が一番風量が少ない。
放射冷却で屋根が冷たくなりますので外部の影響を受けると下降気流ができます。
そして室内は暖かいですが、その熱が漏れ通気層は幾分暖まります。

そのバランスで空気が動かないのです。

内部結露が起きやすいのは、寒冷地では冬の夜間でしょう。
その時に一番空気が流れないのです。
考えればその党利になると想像は付くのですがそこまで考えたことはありませんでした。

これは軒裏換気があるときも結局同じなのですが、途中に換気口がある分だけ少し良い用です。
でもほとんど同じ。あまり差はありません。

換気口有り無しよりも 通気層の厚さの方の影響の方があるかも知れません。

この論文で判ったことは、途中に軒裏換気口が あるなしではほぼ変わらないと言うこと。

今後の当社の取り組みに活かせそうです。

南面は日中の通気量確保に注意 軒裏換気口は必要

ですが、南面は日射熱取得のために大きな窓が多く、壁が少なくなります。

壁の通気量と屋根の通気量のバランスがとりにくくなりますね。

真夏のやけ込みを防ぐには、屋根の通気量をたくさん確保したいです。
どうすれば良いでしょうか?

壁の通気量で足りないなら、やはり軒裏換気口が欲しいですね。

大開口のたくさんある南面はやはり軒裏換気口を付けた方が良さそうです。
この測定はかなり難しいと思いますので、経験、実測、が重要そうですね。

しかし経験と実測と言っても ベースとなる知識が無いと全くダメですね。
日頃の勉強、実測、検証などがあって、これからも頑張っていきたいと思います。


Posted by 髙橋 慎吾