【警告】気温上昇で今作っている建物が危険!? 〜夏の「壁の中のカビ」から家を守るために〜
こんにちは。高橋建築株式会社の高橋慎吾です。
この土日、日本建築学会の「熱シンポジウム」に参加してきました。 建築の温熱環境に関する様々な新しい知見が発表され、とても有意義な二日間だったのですが……その中で、皆さんへ至急共有しておきたい「緊急性のあるとても重要なこと」がありました。
それは、気候変動(温暖化)が建物に与える影響についてです。
皆さん、温暖化について「ただ夏が暑くなるだけでしょ?」と安易に考えていませんか? もし、関東地方が沖縄と同じような気候になったら……あるいはそれ以上になったら、私たちの住む家はどうなってしまうのでしょうか。
「夏の壁の中」でカビや腐朽が始まっている
ここ数年の温暖化による気温上昇は、皆さんも肌で感じていると思います。 実は今、この暑さのせいで「夏に、家の壁の中でカビが生えたり、木材が腐ったりする」という恐ろしい現象がすでに起きています。
大手ハウスメーカーでも、この夏のカビや腐朽のクレーム対策に追われている……学会ではそんな生々しい話も出ていました。
これまで「結露によるカビ」といえば、寒い冬に起きるものというのが常識でした。 それが今、夏に起き始めているのです。
なぜ夏にカビが生えるの?
原因は「温暖化による高温多湿化」と「エアコンの普及」です。 エアコンをしっかり効かせた室内は、人間にとってはとても快適ですよね。しかし、建物にとっては非常に過酷な状況を作り出しています。
というのも、これまでの日本の家づくりは「冬の寒さ・結露対策」が優先されてきました。 冬に室内から壁の中に入り込んだ湿気を、外壁の裏側にある通り道(通気層)から外へ逃がすような作りになっています。「夏の湿気」のことは、あまり考えられていなかったのです。
その結果、夏はどうなるか。 外のムワッとした湿気が、外壁の通気層から壁の中に入り込みます。そして、室内の冷えたエアコンの空気に冷やされ、壁の中で結露します。さらに悪いことに、「冬のための防湿フィルム」や一般的な「ビニルクロス」がバリアとなってしまい、入り込んだ湿気の逃げ場をなくし、壁の中にたっぷりと水分を溜め込んでしまうのです。
昔は夏の湿気もそこまでひどくなく、冷房を使う時間も短かったため、湿気が溜まってもすぐに乾き、大きな問題にはなりませんでした。 しかし今は違います。逃げ場を失った湿気によって、壁紙(ビニルクロス)の裏側でカビが繁殖する事象が多発しているのです。
関東が沖縄並みの気候に? 将来予測と現状の危機
さらに追い打ちをかけるのが、今後の気候の「将来予測」です。 温暖化により、気温はさらに上昇します。(学会では将来予測のグラフも提示されました) ワーストケースでなくても、平均気温が「2度」上昇することは覚悟しなければなりませんし、「4度」上昇する未来も視野に入れる必要があります。

つまり、関東が沖縄並み、あるいはそれ以上に過酷な気候になるかもしれないのです。 シンポジウムでは、沖縄の下地先生が実際の不具合事例を公開してくださり、実測やシミュレーション結果、そしてその改善案まで発表してくださいました。本当に勉強になりました。
ここで皆さんに知っておいていただきたい、とても残念な事実があります。 現在カビなどの不具合が発生している「冬優先の壁の作り方」は、今でもほとんどの工務店が採用している標準的な仕様だということです。 つまり、現在日本で建てられている家の多くは、これからの夏の猛暑・高湿化に対応できていません。そして、これから家を建てるお施主様に、その事実が知らされることはほぼないでしょう。
この情報を公開することへの迷い
私自身、この情報をブログに書くかどうか、実はとても迷いました。 「他の工務店の批判をしている」と受け取られたら、損をしてしまうからです。
正直に申し上げますと、過去に当社で建てた住宅の中にも、現在の基準で見ると完全には対応しきれていないものがあります。当時の私には、これを知る術も、防ぐ方法もありませんでした。
ですが運良く、かなり以前から海外の先進的な事例(パッシブハウスなど)を学び始めたことで、私は早い段階でこの「日本の壁の危うさ」に気づくことができました。そして、以前からひそかに対策を始めていたのです。 周囲から「海外かぶれだ」と揶揄されることもあり、少し黙っていた時期もありました。
しかし今回、日本の建築学会という公の場でようやくこの問題が大きく取り上げられ、情報がオープンになったと感じました。 だからこそ、他社批判としてではなく、「これから家を建てる人が知っておくべき当然の事実」として、ここでお伝えすることに決めたのです。
やっと書くことができた。という安心感があります。こんなに大切なことを知っていたのに黙っていて申し訳ございません。
このことに関してまだ少しお話しできないこともあります。直接聞いていただければお話しできる立場のかたにはお伝えします。
安心できる家づくり「3つの目安」
すべての家がダメだというわけではありませんので、安心してください。 これから家づくりをされる方に、安全な壁構成を見極める「目安となる考え方」をお伝えします。
- 湿気が壁の中に留まらない構成になっているか 断熱材に湿気を閉じ込めるような防湿フィルムがなく、外側に湿気が抜けやすい耐力面材(建物を支える板)を使っていること。仕上げ材も湿気を通す(透湿性のある)ものを選ぶのが理想です。
- 室内側に「可変調湿シート」を使っているか 周囲の湿度に合わせて湿気を通したり止めたりしてくれる、特殊なシート(可変調湿シート)で室内側をコントロールしているか。
- 「非定常計算(WUFIなど)」で夏冬の安全性を確認しているか 単純な計算ではなく、1年を通した実際の温度・湿度の変化をコンピューターでシミュレーションし、壁の中が安全かどうかを科学的に確認しているか。
どの方法でも大丈夫です。少しはっしょって書いているので良く検討してくださいね。
当社では当然、これらをクリアした家づくりを行っています。

最後に
今回の学会では、お昼休みに有馬先生を捕まえて、シミュレーションに使う「将来予測の温湿度データ」の考え方について直接確認することができました。特に曖昧だった「湿度変化のデータの取り扱い方」がクリアになり、本当にラッキーでした!
また、齋藤先生が発表された「壁体の耐久性の考え方」が、ようやく私たちが学んできた海外の基準に近づいてきたことも、日本の建築業界にとって非常に良い傾向だと感じています。
まだまだお伝えしたい有益な情報がたくさんありますので、このブログで少しずつ共有していきますね。 皆さんの後悔のない家づくりに、ぜひお役立てください!
高橋建築株式会社 代表取締役 高橋 慎吾 (一級建築士 / PHI公認パッシブハウスデザイナー / PHIUS公認パッシブハウスコンサルタント/パッシブハウスジャパン元理事/建築学会会員)






