今回は窓について考えてみましょう。
まずサッシの種類です。
サッシは大きく分けて
アルミ製のもの
アルミと樹脂の複合のもの
樹脂だけでできたもの
木製
と大別されます。
フレームがアルミのサッシは熱のロスが大きいので使われなくなってきました。
樹脂サッシの性能が良いのですが、価格や防火の関係で大手ハウスメーカーではアルミ樹脂複合サッシを使うところが多いようです。
住友林業の標準仕様は三協立山のアルジオのペアガラスのようです。カタログを見ると標準的な大きさの縦滑り出しUw=2.15とありました。(間違っているかもしれませんがアルミ樹脂複合LOW-Eペアならほぼ同程度でしょう。
今回の調査した物件はオーナーさんの希望でAPW330の樹脂サッシに変えてありました。住友林業の計算書を見るとUw=1.51です。かなり良いですね。
当社で使っているYKKAPのAPW430 トリプルガラスですとUw=1.11のようです。標準仕様と比べると倍くらい性能が違いますね。(06011縦滑り出し)WINDEYEデーター添付します。
サッシの影響
サッシの性能は大きく影響します。
壁や天井の断熱性能と比べ5倍10倍もサッシの方が悪いからです。
熱貫流率が一桁違います。
この住宅の計算書から代表的な部位の数値を比較してみました。ドアや窓の性能がそのほかの部位に比べて大分性能が悪いのが分かります。
ドアが一番悪いのですがドアは一つですし面積もさほど多くはありません。
先ほどの数字に部位ごとの面積をかけると部位ごとの熱の漏れる量が分かります。
外壁と窓の熱貫流量が多いのが一目で分かりますね。
サッシの選択が大きな影響をもたらすのはおわかりいただけたと思います。
窓は構造によらず商品を選択すれば良いだけですから、比較的性能を上げたり下げたりが容易です。
もし違うサッシだったら?
この住宅がAPW330の樹脂サッシに変えずに標準のアルミ樹脂複合サッシだったらどうだったでしょうか?
仮に平均U=2.15としてみます。
窓の熱貫流量が42.44から57.878に増えました。15.4Wの差です。
アルジオ APW330 APW430トリプルガラスの熱貫流量の比較です。
サッシによる差が大きいことが一目瞭然ですね。
サッシの違いでUAはどう変わるのでしょうか?
サッシを変えるだけでUAが大きく変わります。
アルジオアルミ樹脂だとUA=0.51
APW330樹脂ペアならUA=0.47
APW430トリプルガラスならUA=0.42です。
性能を簡単に変えられ部位だとおわかりいただけたと思います。
サッシの種類による価格差は
サッシをお気軽に変えるだけで住宅全体の性能が1割づつくらい変わります。
それでも価格が心配で、そう簡単には変えられないかもしれませんね。
サッシの価格はとても様々なので一概に比較することは困難です。
それでもあえてざっくりというなら
サッシの価格差はそれぞれ50万円位の差では無いかと想像できます。
もう少し少ないかもしれませんし,多いかもしれません。
皆さん、おうちをお建てになる時に値段を出してもらってください。
ガラスの選定
ペアガラスと言っても性能は様々です。ガラスによって全く違います。ガラスとガラスの間の空気層も6mm位しかないものから16mm位までのものがあります。
ガラスを支えるスペーサーも熱を伝えやすい金属製と伝えにくい樹脂製があります。
中の空気層も熱を伝えにくいアルゴンガスやクリプトンもあります。
熱を反射させるガラスのLOW-E膜も内側だったり外側だったり1層だったり2層だったりします。
それらの違いにより全く性能と価格が違うのです。
ローコストメーカーのガラスはレベルの低いものが多いです。
お客様は分かりませんから最低限のものを使うのです。
「当社もペアガラスですよ!」と言われれば同じだと思ってしまいます。
安い住宅会社は安いなりの理由があるのです。
このおうちは全部が遮熱複層ガラスとなっています。(防犯あわせになっている)
もちろんアルゴンガス入りのLOW-Eガラスですし
ガラスのスペーサーは熱を伝えにくい樹脂タイプです。
空気層も厚いタイプですので選択としてはとても良いと思います。
勉強されているオーナー様ですね。
断熱性能優先の選択ですね。
しかし、もう少し踏み込むなら、割と日当たりの良い家なので南面は遮熱型のガラスでは無く日射取得型の方が良かったかもしれません。
ガラスのU(熱貫流率)は悪くなりますが、遮熱型に比べて5割以上太陽の熱を取り込めるようになります。
一般的には関東地方のように冬に晴れの日が多い地域では南面は日射取得型が熱的には有利とされます。
UAは悪くなりますが暖房負荷は下がり省エネになると思います。
計算書の記載が間違っているだけで実際には日射取得型にされているかもしれませんね。
窓の役割は光の取り込みと太陽熱の取り込み
冬の日差しは主に南側から入ってきます。夏の太陽は日が高くなり屋根の上を通りますのできちんと庇があれば南の窓からの熱い日差しは遮れますね。
このおうちは,格好良く屋根が大きく軒の出が大きいですから、夏の日差しは遮れそうです。
そうするとやはり南側は冬の日差しの温かい熱を積極的に取り込めるガラスを選定すべきだったかもしれません。
しかし、今日ではプライバシー重視でカーテンを開けないかもしれませんし、今後の気候変動で冬寒くなくなり夏暑い方が重要になってくるかもしれませんので、夏重視で南面も遮熱複層ガラスという選択もありかもしれません。
私もいつも悩むところです。
サッシのまとめ
サッシはとても良いものを選択されています。
さらに良くトリプルガラスの選択もあったかもしれませんが、この住宅のほかの部位の熱的性能のバランスから言うとサッシばかり良くなってもダメです。
しかし前述したようにサッシからの熱損失は大きいですし容易に性能をあげやすいですからサッシをオール樹脂のAPW330にしたのは本当に良い選択だったと思います。
ハウスメーカーも思い切って標準仕様を樹脂アルミから樹脂サッシに変えたら良いのでは無いかと思いました。
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