電話をかける

問合せ

ブログを読む

トップへ戻る

髙橋建築

断熱・気密,日記・想い

SDGsの第一人者である 慶応大学の蟹江先生のコラムのご紹介です。

SDGsについては皆さんご存じの方が多いと思います。
様々な目標を持って持続可能な社会を作っていこうという取り組みですね。

その研究の中心人物である蟹江先生の家が、SDGsの観点からつくられました。

設計者は 川島範久先生

イケメンですね。当時は東工大の先生。イケメンですね。当時は東工大の先生。今は明治大学の先生のようです。
この先生から依頼を受け当社でお手伝いをいたしました。

朝日新聞のホームページから引用


https://miraimedia.asahi.com/kanie_06/?fbclid=IwAR01WMUUVjlKaYY2H3GgXu_byU3otVHHgYmh3rF5aGCbSGPtaorIyhbNO4U
当社が 断熱施工アドバイスをしています。

現場での施工指導の様子 現場には納戸も足を運び施工指導 施工チェック。

朝日新聞から引用

気密測定の様子です。緊張する一瞬です。
大工さんの頑張りもありC=0.1。

写真も一番大きく写ってます。体が大きいだけ?
下の方に名前もありますね。
工事も当社職人が指導をしながら行いました。

近年はこのような指導を依頼されるケースも増えてきました。
日本の家が良くなるように、今後もこのようなお手伝いができればと思っています。

お知らせ,断熱・気密

今年度設計開始の物件から仕様変更をしています。
さらなる性能アップです。
5年ほど前から採用している今までの仕様でも 他社に比べて十分すぎるほどなのですが、さらなる先を目指して頑張りたいと思います。

「どこまでやるの高橋建築」

このフレーズは、同業他社が当社によく言う言葉です。
断熱、耐震、耐久性に関して目標値が他社とかけ離れてしまっていたため、設計を手伝ってくれる人。工事を手伝ってくれる人がどれだけ頑張れなくてはならないのか解らないでこう言われます。

当社では,よりよい住まい作りを一生懸命やっているだけで当たり前なのですが、ほかから見るとずいぶんやり過ぎとうつるようです。

今までのレベル

今までの仕様は、パッシブハウスクラスを狙って仕様が造られていました。しかし、その仕様でパッシブハウスにするには十分ではない場合がかなりあります。
実際には周りのおうちの影の影響をうけると十分な日射熱取得涼が得られずパッシブハウスの基準をクリアーできなかったり、建物が南向きでは無い場合などにはクリアーがほとんど不可能でした。

UA=0.23(平屋)0.25~0.28、2階建ての位の断熱性能です。

今回の仕様はHEAT20 G3相当

今回はUA=0.20平屋 0.23 2階建てくらいまで持って行っています。
HEAT20のG3ですね。

この数字くらいまで行くと秩父ではパッシブハウスに近い性能を満たすのが楽になってきます。

このたぐいまれな断熱性能に第一種換気を組み合わせて行きます。

どのように実現するか。

当社は、性能向上と施工性を両立させ,さらにメンテナンス性を考えています。
工事を強みとする会社の為、ただ断熱を厚くしてお金をかけたり工事に手間をかけすぎたりはしません。また、あとでお客様が負担になるような特殊な設備に頼る方法は絶対に良くありません。
あくまでもシンプルに確実な施工ができる方法を目指しています。
具体的な仕様、施工方法に関しては企業秘密です。

断熱・気密,日記・想い

一般の方から、断熱性はどこを目指すべきか質問があります。

これを言い切るにはいろいろな視点からの判断で異なると思いますので大変なことです。

断熱量は多い方が良いのか?

まずはコストなどのことを考えず、断熱量は多い方が良いのか?
という問題です。

多ければ多いほど、外と中の温度の出入りを遮断します。熱の損失が少なくなると言うことです。
単純に冬の暖房が少なくて済みます。
場合によっては秩父パッシブハウスのように冬場に全く暖房がいらない。エアコンもストーブもこたつもいらない家をつくることもできます。
省エネで光熱費もとても安くなります。

こう考えると断熱はたくさんした方が良いと言うことになります。

歴史的な背景から今後の断熱量の変化。

時代の流れとともに断熱量も変化してきています。
どんどん多くなる傾向にあります。

これは、ほかのことでもそうですね。地代に応じて変化していくのです。進化していきます。

たとえがふさわしいか解りませんが、情報を伝えるのに のろし→ラジオ→テレビ→インターネットと変わってきました。
今更 のろしには戻れません。でもラジオ等もまだたくさん利用されています。情報量は少なくてもシーンによってはラジオの方が良い場合もありますね。

断熱量も 新省エネ基準ができ 平成11年には次世代省エネ基準 25年、28年基準、と少しづつ進化してきました。
その流れをより強化したHEAT20のG1、G2というのも提唱され,広く普及し始めています。昨年にはG3も発表されました。
国際的には パッシブハウス基準もあります。

現在つくられている断熱等級4は 平成11年基準とほぼ同等です。
なんと20年前のレベルです。
平成11年当時、そんなに断熱するのはお金の無駄と言って、新省エネ基準レベルでほとんどの家が作れていました。

ですが,世の中は進化し現在ではG1が当たり前。G2で家をつくる人もいます。

10年、20年前にきちんと新しい技術を取り込み 次世代省エネ基準で建てた方は、ずっと温かい家に住めましたし今建てられてているほかの家とさほど変わらないので建て替えを考えるほどでは無いと思います。

しかし、わずか20年しかたたないのに、そのときに古い技術で建ててしまった方は、もう建て替えたくなってしまいます。
実際に当社のお客様でも20年で建て替えしたいと言う方がおります。

いま、ギリギリの基準で建てると、10年後、20年後には古びた仕様となり建て替えたくなってしまう恐れがあるのです。
家は、自動車やスマホのように買い換えできませんから、せめて20年くらい先を見込んで考えた方が良いのでは無いでしょうか?

今はこれで十分と感じても、すぐに不満が出てしまう恐れがあります。
そういう観点から考えると 最低G2 できればG3 パッシブハウスとした方が良いと思います。

エネルギーの観点から

断熱すればするほど、省エネになり,ランニングコストは減ります。
どのくらい減るのでしょうか?

これは HEAT20のグラフを見るとわかりやすいので、それを見ながら説明します。 一番多い6地域のグラフで説明します。HEAT20のホームページからの抜粋となります。

http://www.heat20.jp/members/data/2019/18-3_suzuki_sunagawa_nonaka.pdf
秩父地域の方はこれよりももっとエネルギーを使いますので注意してください。

青いラインが 戸建て住宅 赤いラインが集合住宅です。
戸建ての青いラインで説明します。

断熱された暖かいおうちにすると皆さん家中を暖かくすると思います。
リビング階段や吹き抜けをつくることも多くなりますね。
そうすると家中暖房するようなかんじになります。

それまでは、LDKしか暖房していなかったり、子供部屋や寝室などを暖房するレベルで廊下やトイレなどは暖房せず寒いままでした。

それが断熱されたおうちでは家全体を温めるようになるのですから、少々の断熱では暖房費が増えてしまうのです。

グラフを見てみましょう。
基準はUA=0.87 断熱等級4 約平成11年に作られた基準のおうちを、今まで通り LDK 寝室などを人がいる時だけ暖房した時です。
そのときのエネルギーを基準に0%とします。


人がいるお部屋を 人がいる時だけ暖房する という設定です。
ほかの部屋は寒いですし、お部屋に入って暖房が効くまでは寒いです。
さらに熱損失は大きいですから、輻射面温度は低くあまり快適な環境とはいえません。しかし人がいるお部屋だけは目標温度に達します。

その基準で建てられた家を全館暖房したら。暖房費が2.5倍

そのレベルのおうちを、あまり寒くないように全館暖房したらどうなるでしょう。吹き抜けがあったりリビング階段だったりするとこの条件に近くなりますね。

このグラフが表すように 現在の最高等級である等級4の断熱をしたとしてもおうちの中全体に暖かくすると、140%位。
なんと 暖房エネルギーは2.5倍くらいに増えてしまうのです。
恐ろしいですね。

暖かく快適な家をつくったつもりが、暖かくするには今までの倍以上もエネルギーを使ってしまう。

このレベルの家では、リビング階段はつくらない方がよさそうですね。
しかし、まだ多くの家がこのレベルです。
ハウスメーカーの営業マンは「断熱最高等級の家ですから省エネで暖かい家ですよ。」と説明するでしょう。

G1グレードで断熱したら5割増し。

そして次は G1グレード。省エネ基準レベルのおうちにちょっとガラスでも良くすれば到達できるレベルです。

1.5倍くらいのエネルギーを投入すれば 全館連続暖房も可能です。
ハウスメーカーのレベルがこのレベルですね。
まだまだ、このレベルではエネルギーを使いますから、このレベルで建てた人はもったいなくて全館連続運転にできずに、寒いのを我慢しながら住む人も多いようです。

せっかく造ったおうちなのに快適な生活が送れないのはかわいそうですね。
10年後、20年後には大半の人が建て替えたくなってしまうのでは無いでしょうか?

G2グレードで断熱したら。ほぼ同じ

次にG2グレードレベルにしてみましょう。私が考える最低レベルです。

このグラフを見て解る通り、全館連続暖房をしてもエネルギーの増加は1割以内に抑えられます。
光熱費はさほど気にせず、家中どこでも暖かいというのを体験できるわけです。

G2レベルまでしてやっとこれが実現できます。私が最低G2と言っているのはこの理由もあるのです。

いよいよG3 ほぼ半分の燃費

おすすめレベルのG3です。

やく40%削減できます。大体半分ですね。

ここまで下がると、エネルギーが減った。とても省エネだと大きく実感できるでしょう。

ということは、全館連続暖房をする限り、G3に近い性能にしないと エネルギー、ランニングコストは減ったと実感できないことになります。

我慢しながら冷暖房をしないとさほど省エネにならないと言うことです。

ですから HEAT20では G3を提唱し始めたのでしょう。

G2を超えてG3に近づくほど、体感性能は変わります。
この辺は実際に住んでみたりつくったことのある人で無いと解りません。
つくれなければ、知らないほうが幸せかもしれませんね。

G2,G3の性能は?

HEAT20のホームページから抜粋したHEAT20の性能表です。

UA値
1、2,3地域で0.20
4,5地域で0.23
6、7地域で0.26
となります。

当社のある秩父地域は4,5地域なので0.23ですね。
これは当社でもかなり大変です。

断熱を補う方法 いろいろあります。

コストの問題もあります。家の大きさや,形などでそこまでUA値が上げられないこともありますね。

暖かさや省エネ性は断熱だけでは決まらないので、ほかの要因も重要です。

ほかの要因をきちんと考えれば、断熱量は少なくすることができるともいえます。

大きな要因の一つに日射があります。
太陽の熱は無料ですし、とても膨大です。

きちんと太陽熱を取得しその熱がため込めれば良いのです。その分断熱は少なくて済みますね。

家の形や間取りも重要です。
UA値はあくまでも壁や床、屋根や窓などの断熱量の平均値です。
この数字が良くても、おうちがでこぼこしていて壁の量がとても多かったりするのではダメですね。
その反対に、とてもシンプルにつくられた、外に面する面積が少ないおうちは有利となります。
間取りによっては室内の空気が大きな対流が起きてしまう場合もあります。そういった場合には、大きく熱が拡散し余分にエネルギーを使ってしまう場合もありますから注意してください。

換気システムで熱を回収する方法もあります。健康に住まうには、24時間換気が必須です。
換気をすると言うことは室内の熱を捨てていることと同じです。
その熱を回収できればその分暖かくなりますから、断熱は少なくてすみますね。

まとめ

ほかにも理由はありますが、私が現時点でおすすめできる断熱性能は最低G2、できればG3ということになります。

おまけ

気密性能に関しては 換気の仕組みなどで違いますが私は最低 C=0.5以下
目標0.3くらいにしたいです。
現状大半が0.1台ですが。

お知らせ,メディア掲載・受賞,断熱・気密,設備・空調

岡田さんの本が出版されました。

タイトルは

「エアコン1台で心地よい家をつくる方法」

当社は1台で十分間に合う性能ですがわざと2台にしてます。(笑)

この本には当社の事例が載ってます。

岡田さんから依頼されたわけでは無く、出版社から載せさせてほしいと声がかかったのですが断る理由もないので協力しました。
高性能な住宅が増えることは良いことです。

出版後に編集者から「岡田さんとお知り合いだったのですね。」と言われました。まさか知らないで頼んでいたとは思いませんでした。
知り合いだから選んだのでは無く、性能やデザインで選んでいただけていたと思うとうれしいですね。

内容は、一般のかたたちをターゲットにしたとても読みやすいものです。
勉強になると思います。
当社ほどの高性能過ぎる住宅のレベルではそぐわない内容もありますが、きちんとした内容の本ですので読んでみてください。入門書として最適です。

当社にいっぱい届けられましたので、当社で建築をお考えの方や、すでに当社で建築した人でしたら 取りに来ていただければ差し上げます。(笑)

お知らせ,断熱・気密

いきなり難しい内容の動画のフォローです。

断熱構成を決めるには結露計算が必要

本橋さんの動画で説明されているとおり 断熱材の構成を決めるには結露計算が必要です。

特に違った材料を組み合わせる場合には、それぞれの材料の性質が異なりますから、温度を伝える性質、湿気を伝える性質が異なりますので高度な検討が必要になります。

例にあった構造用面材ににもう一つの断熱材位の場合であれば定常計算で十分です。

複数の断熱材になった場合には WUFI等でその土地の温湿度変化のデーターで時刻別計算を行う必要があります。

WUFIでの計算は湿気の流入まで考える

本橋さんの節目に追加。 透湿防水シートの厚さを変えることで湿気の入る量を調整して計算していますが、それではうまくいきません。
実際には違った結果になります。
施工不良、経年変化などを考えると 防湿フィルム裏に湿気が流入するシミュレーションが必要です。
外部通気層にも通気量のコントロール、雨漏りなどの場合の検討なども行います。

ダイライトの説明

構造用合板からダイライトに変えると夏型結露が起きると説明されております。この説明だと構造用合板は冬型の結露がダメでダイライトが夏型結露がダメでどっちもダメなら安い構造用合板で良いのでは無いか?という判断になる可能性があります。

しかし、結露の水分量、期間の長さなどから圧倒的に冬型の結露対策が重要です。

ダイライトなどのような透湿抵抗が低い構造用面材を使った方が良いと言うことになります。ダイライトが良いと言うことではありません。透湿抵抗が低い面材が良いと言うことです。

ただし、高度なシミュレーションができるなら,安全性を確認して価格の安い針葉樹合板などの構造用面材を使うこともできます。

コメントの中から

Q「 いつも思うんだけど、気密シートって地震の揺れとかでズレたり破れたりしないのかな。あとエアコン工事後から頼んだら普通に穴開けられますよね。 」

A そうなのです。大手家電量販店の施工は特に注意が必要です。
きちんとできているのを見たことがありません。

空けた穴から湿気が入ってはダメですからきちんと施工しないと大変な事故が起こります。

新築でしたら工事中にエアコンの穴をきちんと空けておき気密処理をしておくことが必要です。

断熱・気密

今回は天井、屋根、壁、床などの部位別の考察をしてみます。
断熱性能も各部位が弱点無くできていることが大切です。

それでは見ていきましょう。

各部位の仕様

3地域断熱と書いてあります。5地域なのに3地域仕様ですと言っていますね。

屋根

一部屋根断熱です。

内側から
石膏ボード9.5mm
ネオマフォーム60mm(λ=0.020)木材60mm 木部率9%
ネオマフォーム60mm木材60mm 木部率13%

U=0.189W/㎡K

石膏ボード9.5は12.5の間違いでしょうか?省令準耐火でしょうから。
ネオマフォームの60mmをダブルにしているだけあってとても良いですね。

天井

メインは天井断熱です。

石膏ボード9.5mm
グラスウール220mm(λ=0.038)木材 木部率13%

U=0.17W/㎡K

ここも12.5mmの間違いでしょうか?安全側ですから良いですけど。
すべての梁が220mmあるわけでは無く105mmのつなぎ貼りもむ受けられましたのでグラスウールを1段1段分けて計算すればU=0.16位にはなりそうです。

外壁

石膏ボード12.5
グラスウール(λ=0.038)100mm 木材 木部率17%
密閉空気層 5mm 木部 木部率0%?

U=0.43W/㎡K

まずは以前触れた木部率 私が構造図から拾うと柱間柱だけでも33%ありそうでした。これは大分違いそうです。
さらに密閉空気層部分に木部率が計算してない?わずかだけど有利側ですね。数字に表れてきませんが。
私が計算すると

U=0.52W/㎡Kでした。 間違っていたらごめんなさい。実際は2割も悪くなってしまいます。木材の面積比率は省エネ基準に載っている値なので在来軸組構法はこれで計算できますが,ビックフレーム構法までこの比率が使えるとは思ってもみませんでした。

この家ではありませんが真壁のデーターもあったので載せておきます。真壁ですと U=0.53W/㎡K だそうです。グラスウール24K75mmです。

床(一般部)

木質系フロア 厚みなし 
下地合板 24mm
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)100mm 木材 木部率15%

U=0.33W/㎡K

床は断熱が評価できないものもありますから0にして安全側にしていますね。
フローリングを計算に入れてもさほど大差は無いですから計算が楽であったり仕様変更があっても数字が変わらないようにそうしているのでしょうね。

床(畳)

畳45mm(λ=0.08)
下地合板24mm
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)100mm 木材 木部率15%

U=0.27W/㎡K

畳の床があるのに計算書では使われていないで一般部の床で計算してありました。これは安全側なので良いとしましょう。

床(外気に接する)

ポーチの上の2階の床ですね。

木質フロアー 厚みなし
硬質石膏ボード12.5mm
床下地合板 24mm
グラスウール32k(λ=0.036)180mm 木材 木部率15%
U=0.23W/㎡K

実際に計算すると2階の床の場合は天井断熱の場合の木部率と違ってもっとありますね。まあルールがありますからこれでいいのですけど。我々は正確に出します。

床(床暖部)

ここがよく分からないところです。図面には仕様が書いてあるのですが外皮の計算書では計算に入れてない気がします。

仕様書から読み解くとこのような感じです。

フローリング 12mm
床暖パネル EPS12mm (想像)根だなし(あったらもっと悪くなる)
グラスウール(λ=0.036)60mm 木部率23.2%(構造図より)

U=0.47W/㎡K

床暖パネル部は有利になる用に計算しました。
しかしなぜか断熱材が薄いのでこのようになります。
これが計算から漏れている気がするのです。

しかし、入れたとしても熱貫流が3W位の差ですからまあ大差ありません。

基礎(内部)

押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm
コンクリート140mm

U=1.05W/㎡K

基礎(外周)土間床

立ち上がり部
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm
コンクリート140mm
水平部
押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)20mm 幅900mm

0.64W/mK

玄関ドア下は立ち上がり部の断熱は全くしていないようです。

1.75W/mK

どこが弱点か見てみましょう

床で断熱できていない玄関や浴室の外周回りの基礎が弱いですね。
その部分が4.06mありますので 4.06×0.64=2.60W/Kです。
全体の熱貫流量が152.7W/Kですから1.7%ですが、ほかに比べて極端に低いところがあるとそこだけとても冷たくなります。結露などの恐れも出てきます。少し怖いですね。

最も気になるところは外壁です。

0.43W/㎡Kと外気に面する天井などに比べてもとても大きい値です。

窓やドアは開口部ですので除外して考えます。床も床下の比較的温度が安定している部分に面してますので今回は抜いてみましょう。

そうすると外壁は天井の倍も熱が漏れやすいことが分かります。

さらに問題となるのは、外壁は一番面積が大きいということです。面積まで考慮して熱の逃げを見てみましょう。

全体の逃げる熱の45%外壁から逃げることが分かります。

窓が28% 天井が9%です。

窓が多いのはやむを得ないとは思いますが、壁がもう少しどうにかならなかったのかと思います。

まとめ

正直に書いてくれとオーナー様より言われていますのであえて書かせていただきます。住友林業さんが怒るかもしれませんが事実なのでやむをえません。

断熱量が平均的にまあまあのレベルでとどまっています。

外壁は一般的に建てられているハウスメーカー以外のところより見劣りします。高断熱とはいえない一般的なレベルです。正直に言うと高性能グラスウール(λ=0.038)100mmですから高断熱を唱っている建売住宅でもこのレベルと同じです。むしろビックフレームがある分、断熱材が入らなくなりますから不利でしょう。

天井は建て売りより少し良いです。ここで全体の数字を下げることに寄与しています。建て売りだとグラスウール100mm位でうまくクリアーさせているところもあります。それに比べればきちんとしています。屋根裏は暑くなったり放射冷却の影響なども受けやすいですから少し良くしておくのは当然ではあります。

窓はオーナーさんがオール樹脂サッシに変えて正解です。これが標準のアルミ樹脂サッシだったら結露などの心配も増えたかもしれません。

基礎、土間に関しては「どうしてここまで薄くするの?」と思ってしまいます。面積が小さいので数字には表れてきませんが、ほかに比べて特別に性能が悪い場所を作ることは危険だと思います。

外壁に関してもう一つ心配があります。現代のエアコンの使い方の問題です。
近年はお客様がたくさんエアコンを使いますし外気温は高温高湿度となります。

グラスウールの内側の防湿フィルム面に夏型結露の恐れがあるかもしれ無いと思ったのですが大丈夫そうでした。一瞬結露するかもしれませんがすぐ乾くようです。結果は設定により大きく変わります。割と厳しめに考えた結果ですので心配ないです。
住友林業さんできちんと検証していると思うので心配すること無いですね。
我々は安全を考えて可変透湿シートにしたりすることもあるので少し心配してしまいました。断熱材がそれほど厚くないので問題にならないかもしれません。
それでも夏のエアコン使用時に過度に温度を下げ過ぎない方が安全ですね。

冬の内部結露に関しても全く大丈夫そうです。耐力面材を使ってないですし期ずれパネルで通気もとれていると思われるので心配ないですね

結論としては、
大手ハウスメーカーが自信を持って 「これで高断熱」と言ってしまうのかと思うと残念です。
我々とくらべて大きく見劣りします。
それでもお客様を納得させることができるのですからすごい営業力だと思います。

ここまで言ってしまい申し訳ございません。
事実のみおはなししているつもりです。
間違いがございましたら訂正いたしますので、ご連絡いただければと思います。

断熱・気密

住友林業の家の絞殺をする前におさらいです。

現在のH28基準では 断熱量を外皮平均熱貫流で評価します。
いわゆるUA値です。

建築省エネ機構

簡単に言うと 壁や床、屋根 、天井、基礎、窓の断熱量の平均値です。

日本を8つの地域に分けて基準を決める

この断熱基準では日本を8つの地域に分けています。

IBECホームページから引用

5地域から7地域までは UA=0.87W/㎡kです。オレンジ色からピンクまでですね。範囲がとても広いです。
とても同じ気候とは思えません。秩父のように朝の最低気温がマイナス10度近くになるところから、霜も降りない。氷も張らない。プロ野球のキャンプをするような暖かい地域まで同じです。
当てにならないのが分かりますね。

これは暖房度日という指標を元に決められたものなのでかなり大雑把なのです。冬の暖房期間すべての日を暖房目標温度と一日の平均気温の差で積算します。

海沿いは温度が安定しているので良いのですが、内陸のように朝と日中の温度差が大きい地域では、影響が全く異なりますので、実際におうちを作る時には注意が必要ですね。私は気象庁のデーターを調べ最低気温平均に応じて地域を選べ直した方が良いと考えています。

秩父市は青森市よりも朝が寒い!

地域区分が当てにならないのを分かっていただくために参考に秩父市と青森の温度データーを記載します。


昨年の1月の最低気温平均です。秩父がマイナス4.0℃ 青森市がマイナス3.1℃ですね。秩父の寒さは一部の北東北より寒いのです。

埼玉県ですと鳩山近辺も寒いです。

昨年は秩父よりも朝、寒かったようですね。

このように地域によって様々です。
朝寒いのを我慢できれば良いのですが、朝起きた時にストレス無い生活をしたいなら朝の冷え込みをターゲットに家づくりをした方が良いですね。

住友林業の家の外皮平均熱貫流率は?

今回の住宅の計算書を見ますと外皮平均熱貫流率は0.47W/㎡kと記載されています。5地域の国の基準は0.87です。国の基準を満たしていますので等級4で最高性能ということになります。サッシを標準から変えて良かったです。
皆さんは国の基準は最低基準だとご存じでしょうからあえて国の基準についてのお話はいたしません。
この基準をクリアーしていることを自慢げに最高基準を満たしているので高気密高断熱だとハウスメーカーが言っていたとしたらとても残念です。
この基準は20年も前に作られた基準が元になっているからです。

実際にカタログなどで東北地域レベルの断熱性能などと書いてあったりしますが、そもそも、様々な理由でそれではあまり暖かくならないのです。

HEAT20のグレード

国の基準があまりにもお粗末なので、別に推奨水準を定めようという団体があります。HEAT20という団体です。


http://www.heat20.jp/

現在ではきちんと断熱をしている住宅会社は、国の基準はほぼ無視して、この基準で判断されることが多くなっています。

HEAT20ホームページから引用

5地域 G1グレードで0.48 G2グレードで0.34です。

この家はG1グレードは満たしていることになりますね。この点ではまあまあと言っても良いと思います。サッシが標準だとG1にはならなかったともいます。

G1グレードのシナリオはどういうものなのでしょう。

G1グレードはどういう基準?

G1グレードはモデルプランにおいてこのような内容で決められています。

エアコンはLDKで14時間 寝室で3時間 子供室で3時間つけます。
ずいぶん長いですね。夜寝ている時は消してまた朝つけます。

そしてお部屋の体感温度(輻射面温度なども考慮した温度)が15℃以下に20%位はなってしまう。たまには15度以下になるけどまあまあ15度以上だと言うことですね。
簡単に言うと朝15度以下になる日がたまにあるということです。

これだけエアコンつけるのだからそれほど断熱性能が良いといえませんね。

下の段の表では10度以下にはならないレベルと書いてあります。
それまでに寒い家にお住まいでしたら「新しい家は暖かいね。」ということになりますが、それほどでも無いですね。

このレベルでは吹き抜けは危険。光熱費もかかる。

実は 20年前に建てた私の家がこのレベルなのです。
ですから住み心地などが大体分かります。

このレベルですと 吹き抜けは危険です。
気密性能がとれていても断熱レベルが低いため温度ムラがかなりできてしまいます。私の家ではシーリングファンを回しっぱなしにしないと上下温度差がかなりつきます。現在の高断熱の家ではほとんど温度差はつきません。


このG1のシナリオで暖房時間13時間と書いてありましたがそれほどでは無いにしても 相当エアコンもつけますから、暖房費もまあまあかかってしまいます。
部分完結暖房のシナリオですから吹き抜けは想定されていません。
今回の調査のおうちは吹き抜けはありませんので良かったですが、階段室を通って2階に浴室脱衣室という間取りなのでやはり少し多めに暖房は必要になるでしょう。

20年前に建てた今回調査の家と同レベルの私の家で、なんとか今建てている超高断熱のおうちのように暖かい生活をしようとエアコンつけっぱなしの連続運転をしてみると電気代もとてもかかります。1月に1ヶ月間エアコンをつけっぱなしにしてみました。
518kWhです。26円・kWh出計算してみると 暖房だけでなんと13312円 かなりかかっています。
さすがにこれだけ暖房すれば脱衣室でもトイレでも24時間寒くは無いです。

しかし暖房費以外にも決定的な差があります。

住み心地が違う。その違いは表面温度

断熱性があまり良くないおうちは、エアコンをつけっぱなしで頑張れば温度だけは、超高断熱のおうちと同じように室温を20℃くらいに維持できます。
しかし、決定的な差があります。
それは表面温度の違いです。
暖かい家ではどこでも表面温度が同じで優しく包まれている感じの暖かさなのですが、断熱性の低いおうちでは表面の温度を補うために少し暖かめにしないと暖かいと感じないことが多くそういう感じがしないのかもしれません。

室温と同じくらいに表面温度がなっていると快適だと感じますね。

温度ムラが無く室温と同じくらいに表面温度が維持できるのは 私の経験上G2レベルくらいが必要と考えています。

まとめ

このレベルでも基準はクリアーしていますので高断熱というのは嘘ではありません。

しかし、お客様は暖かく住み心地の良い家を希望したとのことです。

ハウスメーカーさんは自信を持って「十分暖かい。」と説明したとのことです。

このお客様はたくさん勉強している方なので、もちろんUA値などのことは理解していて、現在ではUAが0.3位の家があるのも知ってらしたそうです。

それでも、これほど大きなハウスメーカーが自信を持って「この仕様はすごいから十分に暖かいから大丈夫。」と言ったのを信じてしまったとのこと。

本当の暖かい家を求めていたのにちょっと気の毒です。

私の私見ではありますが G2レベルをクリアーしていれば、パッシブハウスレベルまで行かなくとも暖かさの体感はとても良いと思います。もちろんパッシブハウスレベルの方が良いのは当たり前ですが。

これから建てる皆さんは是非G2レベルをまずは目指してください。

断熱・気密

今回は窓について考えてみましょう。

まずサッシの種類です。

サッシは大きく分けて

アルミ製のもの
アルミと樹脂の複合のもの
樹脂だけでできたもの
木製

と大別されます。

フレームがアルミのサッシは熱のロスが大きいので使われなくなってきました。
樹脂サッシの性能が良いのですが、価格や防火の関係で大手ハウスメーカーではアルミ樹脂複合サッシを使うところが多いようです。

住友林業の標準仕様は三協立山のアルジオのペアガラスのようです。カタログを見ると標準的な大きさの縦滑り出しUw=2.15とありました。(間違っているかもしれませんがアルミ樹脂複合LOW-Eペアならほぼ同程度でしょう。

今回の調査した物件はオーナーさんの希望でAPW330の樹脂サッシに変えてありました。住友林業の計算書を見るとUw=1.51です。かなり良いですね。

当社で使っているYKKAPのAPW430 トリプルガラスですとUw=1.11のようです。標準仕様と比べると倍くらい性能が違いますね。(06011縦滑り出し)WINDEYEデーター添付します。

サッシの影響

サッシの性能は大きく影響します。
壁や天井の断熱性能と比べ5倍10倍もサッシの方が悪いからです。
熱貫流率が一桁違います。

この住宅の計算書から代表的な部位の数値を比較してみました。ドアや窓の性能がそのほかの部位に比べて大分性能が悪いのが分かります。

ドアが一番悪いのですがドアは一つですし面積もさほど多くはありません。
先ほどの数字に部位ごとの面積をかけると部位ごとの熱の漏れる量が分かります。

外壁と窓の熱貫流量が多いのが一目で分かりますね。

サッシの選択が大きな影響をもたらすのはおわかりいただけたと思います。

窓は構造によらず商品を選択すれば良いだけですから、比較的性能を上げたり下げたりが容易です。

もし違うサッシだったら?

この住宅がAPW330の樹脂サッシに変えずに標準のアルミ樹脂複合サッシだったらどうだったでしょうか?
仮に平均U=2.15としてみます。

窓の熱貫流量が42.44から57.878に増えました。15.4Wの差です。

アルジオ APW330 APW430トリプルガラスの熱貫流量の比較です。

サッシによる差が大きいことが一目瞭然ですね。

サッシの違いでUAはどう変わるのでしょうか?


サッシを変えるだけでUAが大きく変わります。

アルジオアルミ樹脂だとUA=0.51

APW330樹脂ペアならUA=0.47

APW430トリプルガラスならUA=0.42です。

性能を簡単に変えられ部位だとおわかりいただけたと思います。

サッシの種類による価格差は

サッシをお気軽に変えるだけで住宅全体の性能が1割づつくらい変わります。

それでも価格が心配で、そう簡単には変えられないかもしれませんね。
サッシの価格はとても様々なので一概に比較することは困難です。

それでもあえてざっくりというなら
サッシの価格差はそれぞれ50万円位の差では無いかと想像できます。
もう少し少ないかもしれませんし,多いかもしれません。
皆さん、おうちをお建てになる時に値段を出してもらってください。

ガラスの選定

ペアガラスと言っても性能は様々です。ガラスによって全く違います。ガラスとガラスの間の空気層も6mm位しかないものから16mm位までのものがあります。
ガラスを支えるスペーサーも熱を伝えやすい金属製と伝えにくい樹脂製があります。
中の空気層も熱を伝えにくいアルゴンガスやクリプトンもあります。
熱を反射させるガラスのLOW-E膜も内側だったり外側だったり1層だったり2層だったりします。

それらの違いにより全く性能と価格が違うのです。
ローコストメーカーのガラスはレベルの低いものが多いです。
お客様は分かりませんから最低限のものを使うのです。
「当社もペアガラスですよ!」と言われれば同じだと思ってしまいます。
安い住宅会社は安いなりの理由があるのです。

このおうちは全部が遮熱複層ガラスとなっています。(防犯あわせになっている)
もちろんアルゴンガス入りのLOW-Eガラスですし
ガラスのスペーサーは熱を伝えにくい樹脂タイプです。

空気層も厚いタイプですので選択としてはとても良いと思います。
勉強されているオーナー様ですね。

断熱性能優先の選択ですね。

しかし、もう少し踏み込むなら、割と日当たりの良い家なので南面は遮熱型のガラスでは無く日射取得型の方が良かったかもしれません。
ガラスのU(熱貫流率)は悪くなりますが、遮熱型に比べて5割以上太陽の熱を取り込めるようになります。
一般的には関東地方のように冬に晴れの日が多い地域では南面は日射取得型が熱的には有利とされます。

UAは悪くなりますが暖房負荷は下がり省エネになると思います。

計算書の記載が間違っているだけで実際には日射取得型にされているかもしれませんね。

窓の役割は光の取り込みと太陽熱の取り込み

冬の日差しは主に南側から入ってきます。夏の太陽は日が高くなり屋根の上を通りますのできちんと庇があれば南の窓からの熱い日差しは遮れますね。

このおうちは,格好良く屋根が大きく軒の出が大きいですから、夏の日差しは遮れそうです。

そうするとやはり南側は冬の日差しの温かい熱を積極的に取り込めるガラスを選定すべきだったかもしれません。

しかし、今日ではプライバシー重視でカーテンを開けないかもしれませんし、今後の気候変動で冬寒くなくなり夏暑い方が重要になってくるかもしれませんので、夏重視で南面も遮熱複層ガラスという選択もありかもしれません。

私もいつも悩むところです。

サッシのまとめ

サッシはとても良いものを選択されています。
さらに良くトリプルガラスの選択もあったかもしれませんが、この住宅のほかの部位の熱的性能のバランスから言うとサッシばかり良くなってもダメです。

しかし前述したようにサッシからの熱損失は大きいですし容易に性能をあげやすいですからサッシをオール樹脂のAPW330にしたのは本当に良い選択だったと思います。

ハウスメーカーも思い切って標準仕様を樹脂アルミから樹脂サッシに変えたら良いのでは無いかと思いました。

調査依頼受け付けます。

このブログをご覧になられた方から相談がありました。

調査依頼はお気軽にお声がけください。実費かかりますが建物の断熱性能を調査いたします。
「暖かい家を建てたつもりだけど寒い。」
「上手に作られていない気がする。」
「もう少し住み心地をよくするには?」

実際の性能を知ることが今後の断熱改修などに役に立ちます。
 メールは info@ta-k.jp です。

断熱・気密

少し日が開いてしまいましたが,報告を続けます。
最初にお断りしているとおり、住友林業で家を建てたオーナーさんの希望で皆さんに真実を知ってほしいと言うことですので、調査結果を公開させていただいています。

玄関土間、玄関ドアの熱画像

玄関土間Sp1 11.5℃ 玄関ドアコーナー6.9℃です。

内部に近い方の玄関土間で13.1℃です。

玄関ドアがUw=2.33W/㎡Kと計算書に書いてありました。
YKK製品のヴェナートです。一応,このシリーズの中では最も高性能とされているD2仕様のドアですので、普通に選ぶなら選択が間違っていたと言うことではなさそうです。しかし近年はUw=1.0に近い製品も多数発売されています。Uw=1.5位のドアも多く使われています。
この数字は逃げる熱量を表していますので小さければ小さいほど断熱性能が良いと言うことになります。

ローコストビルダーなどではUw=3位のドアもまだまだつかわれていますからそれに比べれば高断熱といえるでしょう。

しかし天井や壁などの断熱されている部分はU=0.2とか多くてもU=0.5とかだと思うので同じ面積なら5倍以上も熱が逃げます。このように大きな欠点となるところはできる限り頑張りたいものです。

また、玄関の土間ですがこの部分は基礎断熱となっています。
しかし熱画像で見て分かる通り表面温度はかなり低いようです。
これは,断熱量が少ないためでしょう。
図面を見ると押出法ポリスチレンフォーム3種(λ=0.028)が20mmです。

計算の影響が少ないのでかなり薄くしているものと思われますが、熱画像を見て分かるとおりかなりの熱が漏れています。

約20年前にできた高断熱の基準を引き継いでいる現行の遅れた基準でも、計算によらない熱抵抗は1.7となっています。

熱抵抗1.7は この断熱材厚50mmに相当しますから、このおうちの20mmは薄いですね。しかしこの表によらず、天井や窓など、ほかの部分トータルで併せて数字をクリアーできても良いのですから、この薄さが間違いではありません。

でも、国で定めている部位ごとの熱抵抗値をクリアーできていない部位があるのは、少し残念ですね。

玄関ドアとタイルの床のコーナーの熱がとても逃げているのは、玄関ドアの取り付け方による問題もありそうです。できるだけ熱橋とならない工夫をするともう少し良かったかもしれません。しかしこの部位は我々でも難しい場所です。

壁のコーナーの熱画像

おうちの隅部分です。この家はおうちの角部分が見える場所がトイレでした。

便器は電気を使っていますから暖かいですね。
たくさん熱を発していることから割と電気を食うのが分かります。

家のコーナーから熱が漏れやすいのでコーナー部分を見てみましょう。
El1 9.1℃です。
温度が低いと言うことは、ここからたくさん熱が逃げていると言うことです。

床も11.3℃ 壁も11.8℃と少し寒いようです。

このコーナーから熱が逃げるのはコーナーに柱があったり土台がありすぐ下は外気を通す基礎の通気パッキンとなっていることが影響しています。断熱材が全くない部分です。

参考に熱橋対策をしているおうちの画像を載せます。

このトイレもおうちの角ですが 一番寒いところで14.9℃
壁16.3℃ 床16.2℃です。

ビックフレームの熱画像

住友林業の特徴と言えばビックフレームです。耐力壁を設けずにすみますから大開口が可能となるとても素晴らしい構法です。しかし思わぬ弱点となっていました。

ビックフレームがはっきり見えるほど温度差が見えます。

どこに大きな柱があるか分かりますね。

これは大変なことです。性能を表す外皮計算書を見てみると断熱材と柱の割合を17%で計算しU=0.43となっています。しかし私が構造図から計算すると土台や桁などは除いて計算しても柱の割合が33%位にもなってしまいU=0.52と2割も悪くなってしまいます。

別に計算方法に誤りがあるわけではありません。木造軸組の場合、きちんと比率を計算しなくても17%で計算しても良いことになっているからです。しかしビックフレームの場合には大きな誤差が出ますのできちんと木部率を計算し外皮の熱損失量を出した方が良さそうです。

天井と壁の境の熱画像

家を格好良く見せるために屋根を低く2階の天井すれすれに作ります。
そのためどうしても天井近くに屋根を支える木材(軒桁)が来てしまいます。

それがやはり熱を伝えるのです。

デザインとの兼ね合いもありますからやむを得ないのかもしれません。

エアコンの配管

ここも熱が逃げやすいところです。エアコンの管を通す壁の穴から冷気が入っているのが分かります。
これは我々でもしっかり施工するのは難しいです。
電気屋さんに指導していますが、きちんとやるには相当苦労します。

床暖の熱画像

床暖パネルが敷かれているところが28.3℃ 敷かれていないところが22.3℃です

暖かいですね。とても気持ちが良いです。

ヒートポンプ式の温水床暖房なので機器の効率も良さそうです。

しかし外皮計算書を見ると床暖が敷かれていない廊下などは 押出法ポリスチレンフォーム(λ=0.028)が100mmなのに 床暖があるLDKは高性能グラスウール(λ=0.036)が60mmのみとなっています。

床暖の熱が床下にたくさん漏れてしまって、もったいない感じがしますが、本当に計算書通りに作ってあるか調べませんでした。できればほかの床と同じように高性能な断熱材を暑く施工されていることを祈ります。

床部分の熱貫流率の計算も私がやるのと若干の差が出ていました。

サッシのフレーム ウォームエッジからの熱損失



この家では標準仕様では無く APW330というオール樹脂サッシを使い さらにガラスのエッジは樹脂スペーサーをきちんと使っています。そのため熱の逃げが小さくなっています。とても良い感じです。

これが 標準のアルミ樹脂複合サッシだったりするととても冷たくなります。オーナーさんがきちんと選んで取り替えてもらったみたいです。

天井断熱材の施工は単純だけど難しい

高性能グラスウール(λ=0.038)110mmを2枚重ねのようです。
U=0.17W/㎡kとまずまずの性能です。

袋入りの天井断熱材の施工は割と難しくなかなかうまくいきません。以前Sハウスの天井裏に入った時はがっかりするような施工でしたがこの家はとてもきちんと施工できていました。

それでも袋入りを並べていくのですから若干の隙間は出てしまいます。

隙間から熱が漏れていいます。

換気ダクト 24時間換気 排気の熱損失

この家は第三種換気ですのでこのパイプを通る空気は排気です。

お部屋の空気を外に出すパイプです。

暖かい室内の空気がこのパイプを通って捨てられていくのが分かります。
この捨てられる暖かい空気の量だけ外の冷たい空気がそのままお部屋の中に取り込まれてしまうのです。

第一種熱交換換気扇にすればこの熱が回収できますのでとても暖かく省エネとなります。

まとめ

熱画像を通して分かることはとても熱を通しやすいところ(熱橋)が多いことです。特に面積が大きい外壁の木部率が高く熱が逃げやすい構造です。
また、土台、桁周りの部分も熱橋となっています。

天井もすぐに桁があるためどうしても木部率が高くなります。

オーナーさんが 大きな欠点となりやすいサッシを 高性能樹脂サッシに変えていますのでの熱貫流がとても少なくなり他の部分をカバーしていると考えられます。

施工は丁寧ですし、計算的にはH28基準も十分クリアーしていますので、問題とはなりませんが、お客様が気がつきにくい部分は曖昧に考えているような気がします。ハウスメーカーの研究所のレベルでは分かっているはずなので、基準をクリアーをすれば良いというのでは無く、もう少し工夫をし実際の性能をだせる方法がありそうだと感じました。

断熱・気密

本当の温かい家を知ろう

当社で建ててくださったおうちのデーターを回収してきましたので公開します。
圧倒的な性能なのでびっくりするかもしれませんが、多くのハウスメーカーでは建てられない、このレベルのおうちが普通に建てられていることを皆さんに知っておいていただきたくて,公開いたします。

この家の概要

UA=0.25W/㎡K C=0.065c㎡/㎡
当社で作る家の断熱量はほとんど変わりませんが、家の大きさ間取り、窓の付け方、日の当たり方で UAや暖房負荷がおおきく変わります。この家はほぼ南向きで日当たりの良い45坪あるおうちです。小屋裏収納とロフトも7.5坪あります。
吹き抜けもあります。

少し大きめなのでUAは小さめになります。

実際の温度データー

温湿度のデーターロガーを外気、リビング、脱衣室、寝室に設置し約10日間測定しました。一番下の赤いラインが外気温です。
そのほかは温度ムラが無く、どれもほぼ同じですね。

秩父は寒い!!

 今年はとても温かいです。しかし、朝の気温がマイナス6.7まで下がってしまっている日がありますね。
 秩父は盆地で夜間とても冷え込みます。朝の冷え込みは北海道並みです。秩父の朝の冷え込みは青森市よりも寒いのです。(気象庁データー調べ)

まるで春のような暖かさ

 この住宅はとても温かい高性能住宅です。
 様々な工夫がなされています。

 朝の最低気温がマイナス6.7℃になった時でも,暖房もしないでリビングは17.1℃の温度が維持されていたことが分かります。
 このようなおうちでは、暖房して17℃ではなく一番寒くなる窓の影響により徐々に温度が下がり17℃になってきていますので壁や天井などの表面温度は2度くらい高いことが多いです。
 ですから室温以上に温かく快適に感じます。

無理に暖房して温かくしているお部屋とは違い 「まるで春のような暖かさ」と多くの方がおっしゃります。

暖房時間は少なくても十分

それでも全く暖房がいらないかと言えばそうではありません。

当社で建てた方でも、人によっては暖房がいらないと全く暖房しない方もいらっしゃります。
エアコンもこたつもファンヒーターもつけないのです。
逆に真冬なのに暖房をして、すごく暑くしてすんでいる方もいるのです。
「毎日がハワイ」と豪語する方もいるのです。

このおうちでもほとんど暖房はせず,たまに寒い時だけ暖房をしているようです。

このデーターを見ると朝、6時から7時30分くらいまで暖房している日があることが分かります。

エアコンはつけっぱなしの方が効率が良いと言う記事がたまに見受けられますが,それはまだ中途半端なレベルのおうちなのかもしれません。当社レベルの住宅になるとほとんど暖房はいらないので寒くなった時だけ短時間動かすのが消費電力が少ないようです。

6畳用エアコンで十分

この住宅の暖房に使うエアコンはなんとリビングにある6畳用1台です。

秩父の寒さ、45坪+アルファのおおきさ。さらに吹き抜けもある
それでもこの温度データーです。

「吹き抜けは寒くなるから作らない方が良い。」とネットの記事などでありますが、それはレベルの低いおうちの話です。

6畳用エアコンでもフルに動かすと暑くなってしまいます。

お風呂に入る時も寒くない

日が沈み、夜になると温度が下がっていき7時頃外の温度が1℃になってしまっているのが分かります。でも脱衣室の温度は約20℃。

お風呂に入る時やお風呂から上がる時は裸になっていますから脱衣室の温度が20℃はありがたいですね。

これも無理に暖めた20℃では無いため、壁や天井などの表面温度も20℃位あります。とても気持ちの良い暖かさです。

脱衣室、浴室とも寒くないので 当社の住宅にお住まいのオーナーさんのなかには,冬の朝でもお風呂に入る方もいらっしゃいます。普通のおうちでは考えられないことです。

脱衣室が暖かい秘密

脱衣室が20度あるのは、リビングとつながるドアが開けてあるからです。そしてリビングの暖かい空気が脱衣室を通り浴室から外に出て行くように計画されています。

断熱の量と そこを通る換気の量とのバランスで 上手に無駄なく脱衣室、浴室の温度を維持します。

オーバーヒートもしない。

日中は太陽の光でおうちを暖めます。

このおうちも南側のガラスは日射熱が入ってくる特殊な大きなガラスが並んでいます。

日中の太陽の光の熱をため込むのでです。これは無料です。

高性能なおうちでは、断熱性がとても良いですから、熱を集めすぎオーバーヒートとしてしまうことがあります。室温が25度を超えてしまうことさえもあるのです。

このおうちは、オーナーさんがうまくレースのカーテンなどでコントロールし25度以下に押さえてくれているようです。

このレベルの住宅が当たり前になってくる

当社でこのレベルのおうちは10年前すでに作られていました。
それからこのレベルの家を作り続けています。

ハウスメーカーのレベルではとても考えられません。

これほどの住宅はオーバースペックだと言う方もいらっしゃいます。作れない住宅会社の営業さんはそう言うことが多いです。

しかし、欧米ではこのレベルの家は当たり前になってきています。中国や韓国でさえどんどん建てられています。いずれは必ずこのレベルの家が標準になるでしょう。

ハウスメーカーは約20年遅れている?

なぜそう言えるのかと言えば 当社の20年前の住宅のレベルがまさに今ハウスメーカーが建てている住宅のレベルだからです。

20年前、当時の最高の技術で当社が作っている時も 「高橋建築はやり過ぎ」と言われていました。でも世界では標準となってきていました。日本は遅れているのです。20年たった今は、なんとか住めるレベルの断熱性能は維持されています。暖房エネルギーはとてもかかりますが,まあまあのレベルの暖かさにはなります。

当時のハウスメーカーで建てたスカスカの住宅にお住まいの方は20年しかたっていないのに、寒くて建て直しがしたい人もいるでしょう。

歴史は繰り返されると言いますが、10年後くらいにはハウスメーカーも今の当社レベルのおうちを作り始めるかもしれません。

真冬なのに羽毛布団かたづけました。

この家のオーナーさんのお話です。最初は冬になったのでいつも通りに羽毛布団を出して使い始めたのですが、すんでいる内に必要ないのに気がついたそうです。

「お友達がびっくりする。」「信じてくれない」とお話しされていました。

「暖房入れっぱなしなの」
      「つけてないよ」
「うそでしょ!」

そんな感じらしいです。

「床暖入ってるじゃ無い」
      「床暖ないよ。」

そんな会話にもなるそうです。

床暖は必要か?

床暖がとても快適と言われますが、当社の家は、床暖が無くてもあるような錯覚をしてしまうほど温かく感じるのです。

多くのオーナーさんがおっしゃります。
本当に温かい家は全く違うのです。

当社でも床暖を設置するのを標準にしていた時期がありましたが、その後の住まい方を見ていると床暖のスイッチをつけない方が多いのに気がつきました。
せっかく設置しても使ってもらえないなら意味がありません。
床暖も寿命がありますから,メンテナンスや取り替えを考えると、無いにこしたことはありませんね。

本当の性能の違いを知ろう

多くの方が、大手ハウスメーカーが作るものが最高と勘違いしています。

大手だからきちんとしているだろうと思っています。

よく勉強して見比べてみてください。

全く違うのに気がつくはずです。

今の世の中は、情報が多いです。どの建築会社も良いことばかり言います。情報の量をたくさん発信している会社が強いです。

たくさんの情報の中から自分に合った情報をきちんと選び抜くのは大変です。自分の身を守るには 自分で勉強するしかありません。