中大規模の壁の断面構成 強度の面から
近年 中大規模の建築物も木造化が行われています。
大規模な建物ですから構造設計も大変です。多用されるのが、外に24mm構造用合板を張る方法。
壁倍率で15倍という強度となります。当社でよく使う高強度のMDFの耐力壁ですら4.3倍ですからその3倍以上の強さとなります。
断熱を組み合わせて
今回の事例の建物は、断熱もがんばっています。
左の層から
外壁
通気層 30mm
透湿防水シート
構造用合板 24mm
断熱材(柱、間柱)グラスウール 32k 240mm
防湿シート
合板 12mm
石膏ボード 12.5+9.5mm
このような構成です。
内部結露するのか?
もちろん定常計算では結露するという結果にはなりません。
設計事務所や設備設計事務所、ゼネコンもこれくらいは考えているでしょう。
高断熱で室内条件として20度60%での検討がheat20のガイドブックで示されていますがそれでも安全という評価です。
長期性能を考える
建物は完璧に工事ができるとは限りません。
壁体には電線が通ったり設備の配管が貫通したりしますね。その部分の防湿処理は難しい施工となります。熟練した施工者でも思わぬミスが起こりやすいところです。
また、それらの設備部材は振動などで動くこともあります。長い間には気密テープがはがれることもあるでしょう。
さらに、木材が貫通するところも曲者です。もちろん念入りな気密処理などしますが、木材は長い年月で反ったり捻じれたり、痩せたりします。そのような状況でも完璧な気密を保つのはなかなか難しいですね。
貫通しないところでも木材のやせによりシートが浮くことも考えられます。
そのほか、居住者が額を吊るのに釘で穴をあける。家電量販店がエアコンをつけたらそのような施工はできないですから一発で機密性能が落ちますね。
このように、長期間の性能を考えると機密性能が落ち防湿シートから壁体内に室内の空気が入りやすくなることは明らかなのです。
湿気を持った空気の移流を考慮する
将来の経年変化や初期の施工ミスを考慮して最初からそれらを考慮して安全な設計をしておくことが大切です。
「当社は完璧な施工だから安心してください。経年変化に追従できるように考慮しているので安全です。」
「そこまで考慮する必要はありません。」
そんな説明をする建築会社、建築士がいたとしたら要注意。
防湿施工ばかりでなく、耐震や耐久性そのほかいろいろなところまで自分の基準で適当だと思って間違いないでしょう。
計算はできなくても湿気の逃がし方などは考慮しているべきです。
非定常計算をしてみる
湿気の移動などを考慮するためには、時間の変化に応じて温度や湿気の移動を計算することになります。
壁を構成する部材の熱的性能などを使います。
そして室内の温度、湿度 そして外気温、湿度などです。
ほかにも様々なファクターがありますが省略します。
重要なのが、建物が建つ気象条件ですね。北海道と沖縄に立つのでは全く異なります。
秩父は朝の気温がとても低いです。それは重要な要素ですね。秩父が関東だと思ったら大間違いです。朝の最低気温平均は青森市より低いです。
本当に寒いですね。夏もめちゃくちゃ暑いです。
その温度、湿度データーを1年分入れます。
北側の壁で計算
冬に寒くなり日が当たらない北面の壁で検証しましょう。
4月1日から計算を始めます。まだ朝は寒いので熱は室内から漏れ出して、湿気は室内に入ってきていますね。
夏は熱も湿気もたくさん入ってきています。
冬になると合板のところで湿気の移動量に限界が。
合板が湿気を通しにくい素材なので湿気が止められ始めているのが分かります。
内部結露の始まりです。
合板の含水率がみるみる上昇
1年経つと合板はびしょぬれ。怖いですね。
3年後
結露は解消されずこのような状態
毎年繰り返し変化しなそうです。この構成では乾くことはなさそうですね。
構造の安全性
構造の安全性を考えると強度のことばかりに目が行きます。
しかし、その構造部材が腐ったら?
とても15倍の壁倍率は保てないですね。
断熱のことまで考えないと、このようなことになってしまします。
怖いですね
今回のこの事例は現在計画されている とある物件です。
一応アドバイスはしましたが担当者はコストのことばかり。
お金がかけられなければ、腐って壊れても やむ負えないの?
それは 施主さんのせいなの?
建築業界なんてこんなもの。
まじめで知識ある担当者に巡り合わないと大変なことになります。
でも世の中はこんなもの。
担当者の愛層がよくて、建物の見た目をどうにかすればそれでOK
数年後はどうにかなるでしょ。
こんなものですよ。
それですまされてしまう。
本当にひどい話です。
担当者は知識がないだけで悪気はないのでしょう。
みんな同じにやっているから。
全く悪気もないからいい人に見える。
素人設計でも職人さんの力を借りて形になってしまうのが建築。
まじめにやって比べられるのが馬鹿みたいに思えてくることがあります。
でも頑張ります。「やりすぎ」とか悪口を言われても、お客様のためにできるだけのことはまじめに頑張ります。